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LOGS

狼の牙 その後


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シャノア : (まるまってる)

ハーヴィ : (遠慮がちに扉を開いて顔だけを出すと、丸まっているあなたを見付けて入ってくる)


ハーヴィ : (しゃがんだ。)

シャノア : ……この家広いです。

ハーヴィ : ≪うん、オレが住んでるところの100倍広い。≫

シャノア : 収まりポイントがない………

ハーヴィ : ≪……歩き疲れ?≫  ≪ああ、なるほど。≫

シャノア : (左手側がスースーしてるとぺたぺた床を撫でていた)

ハーヴィ : ≪狭いところすき?≫

シャノア : ……わかりません。なんともいえません。


テラ : (子供を抱えて移動)

シャノア : でも、よくこうしてた気がします。特になにか良くないことがあったとき……

Z : 二人ともそんなところで……

ハーヴィ : ≪そっかあ。≫(まるまりとしゃがみ)

テラ : (お嬢様の部屋へ)

ハーヴィ : ≪……? 覚えてないの?≫(と、丸まったシャノアとゼータを交互に見て)

ハーヴィ : ≪収まりスペースがないんだって。≫

Z : ……今日はお疲れ様。(屈んだ)


Z : 収まりスペース……

Z : あ、もしかして広すぎると落ち着かない?

シャノア : 過去の記憶領域にアクセスできません。……これは推測ですが、メモリの初期化が行われている可能性があります。

シャノア : ……そういうわけでもないんですが……

シャノア : ……すみません、マスターにご迷惑をかけるわけにはいきません。

シャノア : (のそのそ)

ハーヴィ : ≪大丈夫……?≫

Z : いや、良いよ。僕も狭いところのほうが落ち着く。

Z : いい収まりスペースを探すか…

シャノア : ……部屋に戻りましょう。私のせいでこうしていても問題ですし……

Z : (苦笑いを浮かべた)


ハーヴィ : ≪ちゃんとしたところで休んだ方がいいしね。 ……オレも一緒に行ってもいい?≫

シャノア : マスター、構いませんか?

Z : 勿論、いいよ。

ハーヴィ : (あくまで客人だ。勝手に動き回るわけにはいかないだろうと。)

ハーヴィ : ≪ありがと!≫

シャノア : では。どうぞ。

Z : ほとんど公共の施設だからね、ここ。

Z : 姉…お嬢様の部屋はさっき使ってると思うから…

Z : 奥様の部屋で。

シャノア : 了解……また部屋増えてる

ハーヴィ : ≪……オレ屋内に上がる事の方が少ないからなあ。公共の施設って言われても緊張する。≫ ≪ん、わかった。≫

Z : ……昨日は勝手に旦那様の部屋つかっちゃったんだよな…まあいいか

どの部屋に向かおう。



シャノア : (よじ……)

シャノア : (のそ)

Z : (入るなり暖炉に当たったり窓をしめたりした…)

シャノア : (すぽっ)

ハーヴィ : (なんとなく部屋の隅へ)

ハーヴィ : ≪収まった。≫

シャノア : (ベッドと壁の間に入り込んだ)

Z : (自分もベッドの上に乗った。ふかふか…)

Z : ……あ、収まったね。よかった…

ハーヴィ : ≪いいとこあったね。≫

シャノア : (完全に隙間だ。小物を落とすと取るのに苦労するタイプのあそこだ)

ハーヴィ : (出れるのかな…などと思いつつ。)

Z : ……どうやって入ってるんだろうこれ・・・

ハーヴィ : (うろ…… 自分もちょうどいいスペースを探している。)


Z : 時折不思議な動きをしてる…流体みたいというか…

ハーヴィ : ≪猫もすっごい隙間に入っていくよね。≫

Z : ……ハーヴィ、こっち来て大丈夫だよ。客人なんだから。

ハーヴィ : ……ン、

Z : 遠いと話しずらいし。(クソデカベッドをぽんぽんした)

ハーヴィ : ≪それもそっか。≫(少し悩んで、すとん。ベッドの縁で膝立ち。端末だけベッドの上に乗せて)

ハーヴィ : (もふ…柔らかい布団を指でつついた。)

Z : はは……座っていいのになあ……(強制はしないようだ)ジレイなんかは真ん中で遠慮なく寝てたってのに。

Z : イミテイターでも個性が出るよね。

シャノア : ……冷静に考えるとテラやジレイも遠慮ないですよね。かなり。普通使いませんよこんなベッド……

ハーヴィ : ≪…… 部屋とか、他の人と寝たことあんまりないから、こういう時どうしたらいいのか分かんなくて……≫

シャノア : (隙間から声が聞こえてくる)

シャノア : (恐らくハーヴィーからは耳のような形の基部だけ見えていることだろう)

ハーヴィ : (「猫だ・・・・・」)


Z : ……確かに。ハーヴィやシャノアの反応のほうが自然かも。

Z : テラはまあここを預かってるからまあ多少はいいとして。

ハーヴィ : ≪でも、≫ ≪上がっていいなら、もうちょっとそっち行きたいな。≫(にゅ、と身を乗り出した)

ハーヴィ : (控えめにベッドの上。)

Z : ジレイはー…あいつは育ちが良いんじゃないか? ……と、どうぞ。これだけ広いんだから使ったって誰も文句言わないよ。

Z : (デッケエ枕をぽすぽすした)

シャノア : でもだいぶ昔の機体ですよね。なら尚更だとおもうんですけど……やっぱり変。

ハーヴィ : ≪やわらかい…。昨日もメンテナンスルームのベッド借りたけど、床じゃないっていいね。≫

シャノア : (頭だけみょっと出した)

ハーヴィ : ≪なんか、それ聞いてるとジレイに遠慮して何もしないようにしてたの、もったいない気がしてきた。≫

シャノア : 結構図太いタイプですよあれ。

Z : まあ昔の機体だけど……っふ、フフフ……

Z : シャノア、ジレイのこと嫌い?(笑っている…)


ハーヴィ : (と、文字を表示させてベッドのふかふかを堪能。10年以上野外生活をしているイミテイターには貴重な時間。)

シャノア : 嫌悪関係に相当する理由はありません。うるさいなとはおもいます。

ハーヴィ : ≪仲良くしたいけど、肩とか頭とか急に叩くのやめてほしい…びっくりするから≫

Z : あはは……!そうだね。声はデカいし態度もデカイな、彼。

Z : 人間相手だと結構畏まるから、あまり気にならなくなってたや。

Z : あれでもラインシャッハ軍からの使いなんだよね。

ハーヴィ : ≪オレは…… まだ仕事の話しかしたことないや。本国のイミテイターは怖くって。≫(と、昨日も言っていたようなことを。)

シャノア : ……それなんですけど、正式な辞令……あ、彼のことではなく、下知の方のことですけど

Z : 今度窘めておこう。むやみに他のイミテイターを威圧するなって。…

シャノア : それをイミテイターのみから通達されるというのも、少し不思議な話です。

Z : (一瞬シャノアを二度見した)ジレイの辞令……!?コホンッ!!!!!!

シャノア : どちらかというと伝令のように見えま………………

シャノア : 見えます。

Z : はい。


ハーヴィ : ≪……いや、威圧されたわけじゃ。オレは自分の経歴がバレたくないか≫

ハーヴィ : ……

Z : そうだね……彼が言うには視察してレポートを送信する役目らしいけど。

ハーヴィ : ……≪ジレイの辞令≫(無慈悲なフォント。)≪単語帳機能があったら登録したんだけど。≫

Z : そう?あまり高圧的な態度を取ってないかと心配したけど杞憂か。 ……単語帳なくて良かった…

ハーヴィ : ≪そもそも、ここで2049って名乗り続けてたの自体が廃棄されないためっていうか。 ……だからジレイに何かされたってワケじゃないよ。それは大丈夫、うん。≫

ハーヴィ : ≪だから、次はもうちょっと色々話せたらいいな。≫

シャノア : はいき…………(ずももももと隙間に沈んでいった)

Z : そうか。なら良かった。……

Z : あ、あ~!!(沈んでいくシャノアに慌て…)

Z : ……

Z : (入ってきた泥太郎とエムトハを交互に見た)

ハーヴィ : ン! ン…! ≪出れなくなる……! そんなに沈んだら……! ≫


Z : よ、ようこそ……

エムトハ : ……こういう時は……ごゆっくりどうぞと言うのであったか……?

Z : どう?ここに収まる?(自身の傍を指し示す)

ハーヴィ : (気付き、ベッドの上から手を振る)

エムトハ : どうも……え?

Z : 気にしなくて良いよ。なんかちょうどいいスペースあるし…ほら…

エムトハ : (ブン.....)

エムトハ : じゃあ……少々ここでスリープモードにさせて頂くか……そう言えばここで前も寝ていたな……

Z : ……それにその…人を励ますっていうの…不得手で…どうしたらいいか…(ぶつぶつと呟いた…)


シャノア : ほんとにど真ん中じゃないですか。(にゅ)

Z : あ、そこなんだ。

エムトハ : いやまだ行くッ

エムトハ : うおおッ

エムトハ : よし。

Z : よし。

ハーヴィ : ? ≪ゼータ、なにか言った?≫(と、顔を覗き込もうとして)

ハーヴィ : (エムトハ、カットイン。)

ハーヴィ : ン! (イイネ!)

エムトハ : (そしてダウンした。ぽすッ)

Z : な、なんでもない。おさまりがついたね、よし。(エムトハを軽くぽんぽんした)


Z : ……泥太郎センターなんだけど?まあいいか…

Z : 風船もってかわいいね…

エムトハ : 功労したゆえ……

Z : そっか……

ハーヴィ : ≪ほんとだ。かわいいね≫

エムトハ : 偉いマークである……

ハーヴィ : ≪今日は偉いの泥太郎!≫

エムトハ : 私を運び 柵をくぐり抜け 偉かったのだ

エムトハ : というわけで私はスリープモードに入る 後のことは、頼んだぞ……

Z : 遊園地行ってきたんだ…えらいぞ…おやすみ…

シャノア : おやすみなさい。

ハーヴィ : ン。≪おやすみ。お疲れ様≫

エムトハ : おやすみであーる…………


Z : …………(暫し静寂―)

ハーヴィ : ≪寝た。こうなると一気に静かになるなあ。≫(表示される文字。持ち主は、当然無言。)

シャノア : ……

Z : そうだ、外は…森は、随分緑が多かったね。こっちじゃ手入れされた作物がやっとなのだけど…。

シャノア : 工業化されていないようでしたから、その影響だと思われます。

ハーヴィ : (ぽふ、と枕を叩き。汚れたぬいぐるみを枕元に。……と、声のほうへ視線を。)

ハーヴィ : ≪たまに資源の調達で行くけど、いつ行っても綺麗だね、向こうは。≫

ハーヴィ : ≪今日の森くらいのは、珍しいと思うけど。≫

Z : そうだと思う。まるでおとぎ話に出てくる森みたいだった。空気も違ったしね。

Z : ああいった場所がこの世にはまだ多くあるとすると、僕が見てきた景色の狭さを実感するよ…。


ハーヴィ : ……(しばし、端末は沈黙を選び)

ハーヴィ : ≪……これから、もっと沢山見れたらいいね。≫(沈黙し、悩んだ末に一行。)

Z : (緩く、口元が弧を描く)ああ、勿論。

Z : (手窓を作り、部屋の天井を映すようにして)まだ見たことのない景色、温度、匂い、音…

シャノア : ……。

Z : 僕はここの皆にも見せたいと思う。

ハーヴィ : (その様子を見て、ふと自分も手を翳してみる。人形の指。くるりと返せば、手首のコネクターが目に入る。)

ハーヴィ : ≪……オレも、皆と一緒に行きたいな。≫(端末は、素直な心を映し)

Z : ……うん。僕らは知らなすぎるから、もったいないもの。

ハーヴィ : (こくり、頷き。)≪きっと、外に出ていけるきっかけは沢山あったはずなのに≫

ハーヴィ : ≪見落としちゃったのかな。オレたち。≫

Z : (ぱっと手窓を崩して、体の力を抜いた。魔導具による灯りに目を細める)

ハーヴィ : (息を吐く。人間じみた空気の出し入れ、身体の伸縮。)

Z : ……(暫し逡巡する間。呼吸の音)


Z : 僕は、怖かったかな。

ハーヴィ : (小首を傾げ、あなたのほうを見やる。)

Z : 置いて行かれたと分かっていながら認められなくて、育った世界の内にいれば傷つくことはなかった。

ハーヴィ : ……

Z : 外に出たら、また置いて行かれるかもしれない。よそ者だと冷たくあしらわれるかもしれない。

ハーヴィ : (端末は、入力待機中のステータスを示したまま。)

Z : "僕ら"は世間一般からしたらちょっと、変わっているから。

ハーヴィ : (『僕ら』。)


Z : ……人間が怖いんだ。僕。

シャノア : ……マスター?

ハーヴィ : ……? (驚いたような表情になり)

Z : (ぎゅっと衣服の胸あたりを掴んだ。幼子のように)らしくもない弱音吐いたな。悪い。

シャノア : ……

シャノア : (もぞもぞ)

ハーヴィ : ……(のす… ちょっとベッドの上を移動)

シャノア : (よじ……

ハーヴィ : (もそ…

Z : ここだけの秘密にしておいてね。旅人にどやされたらやだし… ……

ハーヴィ : (あなたの目の前にちょこんと座った)

Z : わ、な、なに?


シャノア : ……怖いですか?

シャノア : 人間の真似をしている私達のことは、怖いですか?

Z : ……怖くないよ。

シャノア : ……。

ハーヴィ : ……

シャノア : マスター。

Z : 変かな。やっぱりその… ……うん?

ハーヴィ : (もの言いたげに明滅する、端末のバー。)

シャノア : マスターが怖いのは、人間じゃなくて……

シャノア : きっと、分からない事そのものです。

Z : 分からないこと……そのもの?

シャノア : そうです。どう触れていいか、わからない時。躊躇い。

シャノア : マスターが恐れているのはそういうときだと思います。でも、マスターだけじゃありません。

シャノア : 多分、ハーヴィもそう……。


ハーヴィ : ……

ハーヴィ : (小さく、頷いた。)

Z : ……そうか…(困ったようにぎこちなく、頷く)

ハーヴィ : ≪オレは、≫

ハーヴィ : ≪みんなと違う事が≫ ≪怖くて。≫ ≪みんながわからないのが≫ ≪怖かったから≫

ハーヴィ : ≪ずっと、≫ ≪『2049』の役をして、怖くないフリしてた。≫

ハーヴィ : ≪でも、≫

ハーヴィ : ≪ゼータがオレたちに『生き延びてほしい』って言ってくれて、オレたちを同じって見てくれてるのがわかって、嬉しかったから≫

ハーヴィ : ≪今はちょっとだけ、怖くなくなったよ。≫

Z : (ぱちぱちと、レンズに覆われていない生身の目が瞬いた)(ゆっくり、やわらかく笑みを形作る)

Z : そっか。そっか……よかったぁ……。


ハーヴィ : ≪ずっとお礼言いたかったんだ。≫ ≪だから、今度はオレがゼータの『わからない』を、怖くないように助けたい。≫

ハーヴィ : ≪シャノアも、そう思う?≫

シャノア : ……私は、護るだけです。まあ、性能不足ととられても、仕方ないんですけど……

ハーヴィ : ン、(そんな答えにも、小さく嬉しそうに。)

Z : こちらこそ。どういたしまして。……そろそろ機嫌直してシャノア…そういう性分っていうなら仕方ないかもだけど…(苦笑いしつつ、そっと撫でる)

Z : 少なくとも君たちがいてくれる、それだけで助かる人間がいるんだから。

シャノア : はいえんどもでるのぷらいどずたずたなんです(そういうとゼータにくっついてそのまま丸まった)

Z : あ~よしよしよし~(猫を撫でる人…もといこれは大型犬を撫でる人かもしれない…になった)

シャノア : (ニュン……)

ハーヴィ : ♪≪嬉しいな。人の役に立てるの。≫(ベッドの上で上体が左右に揺れる。嬉しそう。)


Z : 今日はこのまま寝るかあ~……

ハーヴィ : ≪いいの? ……みんなで寝るの、久しぶり。おねえちゃんたちと一緒だったときみたいだ。≫

ハーヴィ : (と、文字を出しつつも。断る素振りはない。)

シャノア : (ギュ……)

Z : 勿論だとも(ぽかぽかで眠くなるガキだ…)

ハーヴィ : (近くに寝転がり。さっき枕元に置いたぬいぐるみも一緒だ。)

Z : ん、おやすみ……

ハーヴィ : ≪おやすみ!≫(寝転がったまま、嬉しそうな吐息が漏れる。)

シャノア : おやすみなさいまし……

Z : (慣れない外での戦闘に見かけより疲労がたまっていたのか、そのまますとんと眠った…)


ハーヴィ : (寝返りを打って、天を向いた端末を見ることは叶わないだろうが。)

ハーヴィ : (≪みんな大好き!≫。ただ一行。画面が暗くなる。)

ハーヴィ : (もっともらしい嘘が、穏やかな寝息を立て始めた。)


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