狼の牙 その後
- wisteria8770
- 2024年2月8日
- 読了時間: 12分

シャノア : (まるまってる)
ハーヴィ : (遠慮がちに扉を開いて顔だけを出すと、丸まっているあなたを見付けて入ってくる)
ハーヴィ : (しゃがんだ。)
シャノア : ……この家広いです。
ハーヴィ : ≪うん、オレが住んでるところの100倍広い。≫
シャノア : 収まりポイントがない………
ハーヴィ : ≪……歩き疲れ?≫ ≪ああ、なるほど。≫
シャノア : (左手側がスースーしてるとぺたぺた床を撫でていた)
ハーヴィ : ≪狭いところすき?≫
シャノア : ……わかりません。なんともいえません。
テラ : (子供を抱えて移動)
シャノア : でも、よくこうしてた気がします。特になにか良くないことがあったとき……
Z : 二人ともそんなところで……
ハーヴィ : ≪そっかあ。≫(まるまりとしゃがみ)
テラ : (お嬢様の部屋へ)
ハーヴィ : ≪……? 覚えてないの?≫(と、丸まったシャノアとゼータを交互に見て)
ハーヴィ : ≪収まりスペースがないんだって。≫
Z : ……今日はお疲れ様。(屈んだ)
Z : 収まりスペース……
Z : あ、もしかして広すぎると落ち着かない?
シャノア : 過去の記憶領域にアクセスできません。……これは推測ですが、メモリの初期化が行われている可能性があります。
シャノア : ……そういうわけでもないんですが……
シャノア : ……すみません、マスターにご迷惑をかけるわけにはいきません。
シャノア : (のそのそ)
ハーヴィ : ≪大丈夫……?≫
Z : いや、良いよ。僕も狭いところのほうが落ち着く。
Z : いい収まりスペースを探すか…
シャノア : ……部屋に戻りましょう。私のせいでこうしていても問題ですし……
Z : (苦笑いを浮かべた)
ハーヴィ : ≪ちゃんとしたところで休んだ方がいいしね。 ……オレも一緒に行ってもいい?≫
シャノア : マスター、構いませんか?
Z : 勿論、いいよ。
ハーヴィ : (あくまで客人だ。勝手に動き回るわけにはいかないだろうと。)
ハーヴィ : ≪ありがと!≫
シャノア : では。どうぞ。
Z : ほとんど公共の施設だからね、ここ。
Z : 姉…お嬢様の部屋はさっき使ってると思うから…
Z : 奥様の部屋で。
シャノア : 了解……また部屋増えてる
ハーヴィ : ≪……オレ屋内に上がる事の方が少ないからなあ。公共の施設って言われても緊張する。≫ ≪ん、わかった。≫
Z : ……昨日は勝手に旦那様の部屋つかっちゃったんだよな…まあいいか
どの部屋に向かおう。
シャノア : (よじ……)
シャノア : (のそ)
Z : (入るなり暖炉に当たったり窓をしめたりした…)
シャノア : (すぽっ)
ハーヴィ : (なんとなく部屋の隅へ)
ハーヴィ : ≪収まった。≫
シャノア : (ベッドと壁の間に入り込んだ)
Z : (自分もベッドの上に乗った。ふかふか…)
Z : ……あ、収まったね。よかった…
ハーヴィ : ≪いいとこあったね。≫
シャノア : (完全に隙間だ。小物を落とすと取るのに苦労するタイプのあそこだ)
ハーヴィ : (出れるのかな…などと思いつつ。)
Z : ……どうやって入ってるんだろうこれ・・・
ハーヴィ : (うろ…… 自分もちょうどいいスペースを探している。)
Z : 時折不思議な動きをしてる…流体みたいというか…
ハーヴィ : ≪猫もすっごい隙間に入っていくよね。≫
Z : ……ハーヴィ、こっち来て大丈夫だよ。客人なんだから。
ハーヴィ : ……ン、
Z : 遠いと話しずらいし。(クソデカベッドをぽんぽんした)
ハーヴィ : ≪それもそっか。≫(少し悩んで、すとん。ベッドの縁で膝立ち。端末だけベッドの上に乗せて)
ハーヴィ : (もふ…柔らかい布団を指でつついた。)
Z : はは……座っていいのになあ……(強制はしないようだ)ジレイなんかは真ん中で遠慮なく寝てたってのに。
Z : イミテイターでも個性が出るよね。
シャノア : ……冷静に考えるとテラやジレイも遠慮ないですよね。かなり。普通使いませんよこんなベッド……
ハーヴィ : ≪…… 部屋とか、他の人と寝たことあんまりないから、こういう時どうしたらいいのか分かんなくて……≫
シャノア : (隙間から声が聞こえてくる)
シャノア : (恐らくハーヴィーからは耳のような形の基部だけ見えていることだろう)
ハーヴィ : (「猫だ・・・・・」)
Z : ……確かに。ハーヴィやシャノアの反応のほうが自然かも。
Z : テラはまあここを預かってるからまあ多少はいいとして。
ハーヴィ : ≪でも、≫ ≪上がっていいなら、もうちょっとそっち行きたいな。≫(にゅ、と身を乗り出した)
ハーヴィ : (控えめにベッドの上。)
Z : ジレイはー…あいつは育ちが良いんじゃないか? ……と、どうぞ。これだけ広いんだから使ったって誰も文句言わないよ。
Z : (デッケエ枕をぽすぽすした)
シャノア : でもだいぶ昔の機体ですよね。なら尚更だとおもうんですけど……やっぱり変。
ハーヴィ : ≪やわらかい…。昨日もメンテナンスルームのベッド借りたけど、床じゃないっていいね。≫
シャノア : (頭だけみょっと出した)
ハーヴィ : ≪なんか、それ聞いてるとジレイに遠慮して何もしないようにしてたの、もったいない気がしてきた。≫
シャノア : 結構図太いタイプですよあれ。
Z : まあ昔の機体だけど……っふ、フフフ……
Z : シャノア、ジレイのこと嫌い?(笑っている…)
ハーヴィ : (と、文字を表示させてベッドのふかふかを堪能。10年以上野外生活をしているイミテイターには貴重な時間。)
シャノア : 嫌悪関係に相当する理由はありません。うるさいなとはおもいます。
ハーヴィ : ≪仲良くしたいけど、肩とか頭とか急に叩くのやめてほしい…びっくりするから≫
Z : あはは……!そうだね。声はデカいし態度もデカイな、彼。
Z : 人間相手だと結構畏まるから、あまり気にならなくなってたや。
Z : あれでもラインシャッハ軍からの使いなんだよね。
ハーヴィ : ≪オレは…… まだ仕事の話しかしたことないや。本国のイミテイターは怖くって。≫(と、昨日も言っていたようなことを。)
シャノア : ……それなんですけど、正式な辞令……あ、彼のことではなく、下知の方のことですけど
Z : 今度窘めておこう。むやみに他のイミテイターを威圧するなって。…
シャノア : それをイミテイターのみから通達されるというのも、少し不思議な話です。
Z : (一瞬シャノアを二度見した)ジレイの辞令……!?コホンッ!!!!!!
シャノア : どちらかというと伝令のように見えま………………
シャノア : 見えます。
Z : はい。
ハーヴィ : ≪……いや、威圧されたわけじゃ。オレは自分の経歴がバレたくないか≫
ハーヴィ : ……
Z : そうだね……彼が言うには視察してレポートを送信する役目らしいけど。
ハーヴィ : ……≪ジレイの辞令≫(無慈悲なフォント。)≪単語帳機能があったら登録したんだけど。≫
Z : そう?あまり高圧的な態度を取ってないかと心配したけど杞憂か。 ……単語帳なくて良かった…
ハーヴィ : ≪そもそも、ここで2049って名乗り続けてたの自体が廃棄されないためっていうか。 ……だからジレイに何かされたってワケじゃないよ。それは大丈夫、うん。≫
ハーヴィ : ≪だから、次はもうちょっと色々話せたらいいな。≫
シャノア : はいき…………(ずももももと隙間に沈んでいった)
Z : そうか。なら良かった。……
Z : あ、あ~!!(沈んでいくシャノアに慌て…)
Z : ……
Z : (入ってきた泥太郎とエムトハを交互に見た)
ハーヴィ : ン! ン…! ≪出れなくなる……! そんなに沈んだら……! ≫
Z : よ、ようこそ……
エムトハ : ……こういう時は……ごゆっくりどうぞと言うのであったか……?
Z : どう?ここに収まる?(自身の傍を指し示す)
ハーヴィ : (気付き、ベッドの上から手を振る)
エムトハ : どうも……え?
Z : 気にしなくて良いよ。なんかちょうどいいスペースあるし…ほら…
エムトハ : (ブン.....)
エムトハ : じゃあ……少々ここでスリープモードにさせて頂くか……そう言えばここで前も寝ていたな……
Z : ……それにその…人を励ますっていうの…不得手で…どうしたらいいか…(ぶつぶつと呟いた…)
シャノア : ほんとにど真ん中じゃないですか。(にゅ)
Z : あ、そこなんだ。
エムトハ : いやまだ行くッ
エムトハ : うおおッ
エムトハ : よし。
Z : よし。
ハーヴィ : ? ≪ゼータ、なにか言った?≫(と、顔を覗き込もうとして)
ハーヴィ : (エムトハ、カットイン。)
ハーヴィ : ン! (イイネ!)
エムトハ : (そしてダウンした。ぽすッ)
Z : な、なんでもない。おさまりがついたね、よし。(エムトハを軽くぽんぽんした)
Z : ……泥太郎センターなんだけど?まあいいか…
Z : 風船もってかわいいね…
エムトハ : 功労したゆえ……
Z : そっか……
ハーヴィ : ≪ほんとだ。かわいいね≫
エムトハ : 偉いマークである……
ハーヴィ : ≪今日は偉いの泥太郎!≫
エムトハ : 私を運び 柵をくぐり抜け 偉かったのだ
エムトハ : というわけで私はスリープモードに入る 後のことは、頼んだぞ……
Z : 遊園地行ってきたんだ…えらいぞ…おやすみ…
シャノア : おやすみなさい。
ハーヴィ : ン。≪おやすみ。お疲れ様≫
エムトハ : おやすみであーる…………
Z : …………(暫し静寂―)
ハーヴィ : ≪寝た。こうなると一気に静かになるなあ。≫(表示される文字。持ち主は、当然無言。)
シャノア : ……
Z : そうだ、外は…森は、随分緑が多かったね。こっちじゃ手入れされた作物がやっとなのだけど…。
シャノア : 工業化されていないようでしたから、その影響だと思われます。
ハーヴィ : (ぽふ、と枕を叩き。汚れたぬいぐるみを枕元に。……と、声のほうへ視線を。)
ハーヴィ : ≪たまに資源の調達で行くけど、いつ行っても綺麗だね、向こうは。≫
ハーヴィ : ≪今日の森くらいのは、珍しいと思うけど。≫
Z : そうだと思う。まるでおとぎ話に出てくる森みたいだった。空気も違ったしね。
Z : ああいった場所がこの世にはまだ多くあるとすると、僕が見てきた景色の狭さを実感するよ…。
ハーヴィ : ……(しばし、端末は沈黙を選び)
ハーヴィ : ≪……これから、もっと沢山見れたらいいね。≫(沈黙し、悩んだ末に一行。)
Z : (緩く、口元が弧を描く)ああ、勿論。
Z : (手窓を作り、部屋の天井を映すようにして)まだ見たことのない景色、温度、匂い、音…
シャノア : ……。
Z : 僕はここの皆にも見せたいと思う。
ハーヴィ : (その様子を見て、ふと自分も手を翳してみる。人形の指。くるりと返せば、手首のコネクターが目に入る。)
ハーヴィ : ≪……オレも、皆と一緒に行きたいな。≫(端末は、素直な心を映し)
Z : ……うん。僕らは知らなすぎるから、もったいないもの。
ハーヴィ : (こくり、頷き。)≪きっと、外に出ていけるきっかけは沢山あったはずなのに≫
ハーヴィ : ≪見落としちゃったのかな。オレたち。≫
Z : (ぱっと手窓を崩して、体の力を抜いた。魔導具による灯りに目を細める)
ハーヴィ : (息を吐く。人間じみた空気の出し入れ、身体の伸縮。)
Z : ……(暫し逡巡する間。呼吸の音)
Z : 僕は、怖かったかな。
ハーヴィ : (小首を傾げ、あなたのほうを見やる。)
Z : 置いて行かれたと分かっていながら認められなくて、育った世界の内にいれば傷つくことはなかった。
ハーヴィ : ……
Z : 外に出たら、また置いて行かれるかもしれない。よそ者だと冷たくあしらわれるかもしれない。
ハーヴィ : (端末は、入力待機中のステータスを示したまま。)
Z : "僕ら"は世間一般からしたらちょっと、変わっているから。
ハーヴィ : (『僕ら』。)
Z : ……人間が怖いんだ。僕。
シャノア : ……マスター?
ハーヴィ : ……? (驚いたような表情になり)
Z : (ぎゅっと衣服の胸あたりを掴んだ。幼子のように)らしくもない弱音吐いたな。悪い。
シャノア : ……
シャノア : (もぞもぞ)
ハーヴィ : ……(のす… ちょっとベッドの上を移動)
シャノア : (よじ……
ハーヴィ : (もそ…
Z : ここだけの秘密にしておいてね。旅人にどやされたらやだし… ……
ハーヴィ : (あなたの目の前にちょこんと座った)
Z : わ、な、なに?
シャノア : ……怖いですか?
シャノア : 人間の真似をしている私達のことは、怖いですか?
Z : ……怖くないよ。
シャノア : ……。
ハーヴィ : ……
シャノア : マスター。
Z : 変かな。やっぱりその… ……うん?
ハーヴィ : (もの言いたげに明滅する、端末のバー。)
シャノア : マスターが怖いのは、人間じゃなくて……
シャノア : きっと、分からない事そのものです。
Z : 分からないこと……そのもの?
シャノア : そうです。どう触れていいか、わからない時。躊躇い。
シャノア : マスターが恐れているのはそういうときだと思います。でも、マスターだけじゃありません。
シャノア : 多分、ハーヴィもそう……。
ハーヴィ : ……
ハーヴィ : (小さく、頷いた。)
Z : ……そうか…(困ったようにぎこちなく、頷く)
ハーヴィ : ≪オレは、≫
ハーヴィ : ≪みんなと違う事が≫ ≪怖くて。≫ ≪みんながわからないのが≫ ≪怖かったから≫
ハーヴィ : ≪ずっと、≫ ≪『2049』の役をして、怖くないフリしてた。≫
ハーヴィ : ≪でも、≫
ハーヴィ : ≪ゼータがオレたちに『生き延びてほしい』って言ってくれて、オレたちを同じって見てくれてるのがわかって、嬉しかったから≫
ハーヴィ : ≪今はちょっとだけ、怖くなくなったよ。≫
Z : (ぱちぱちと、レンズに覆われていない生身の目が瞬いた)(ゆっくり、やわらかく笑みを形作る)
Z : そっか。そっか……よかったぁ……。
ハーヴィ : ≪ずっとお礼言いたかったんだ。≫ ≪だから、今度はオレがゼータの『わからない』を、怖くないように助けたい。≫
ハーヴィ : ≪シャノアも、そう思う?≫
シャノア : ……私は、護るだけです。まあ、性能不足ととられても、仕方ないんですけど……
ハーヴィ : ン、(そんな答えにも、小さく嬉しそうに。)
Z : こちらこそ。どういたしまして。……そろそろ機嫌直してシャノア…そういう性分っていうなら仕方ないかもだけど…(苦笑いしつつ、そっと撫でる)
Z : 少なくとも君たちがいてくれる、それだけで助かる人間がいるんだから。
シャノア : はいえんどもでるのぷらいどずたずたなんです(そういうとゼータにくっついてそのまま丸まった)
Z : あ~よしよしよし~(猫を撫でる人…もといこれは大型犬を撫でる人かもしれない…になった)
シャノア : (ニュン……)
ハーヴィ : ♪≪嬉しいな。人の役に立てるの。≫(ベッドの上で上体が左右に揺れる。嬉しそう。)
Z : 今日はこのまま寝るかあ~……
ハーヴィ : ≪いいの? ……みんなで寝るの、久しぶり。おねえちゃんたちと一緒だったときみたいだ。≫
ハーヴィ : (と、文字を出しつつも。断る素振りはない。)
シャノア : (ギュ……)
Z : 勿論だとも(ぽかぽかで眠くなるガキだ…)
ハーヴィ : (近くに寝転がり。さっき枕元に置いたぬいぐるみも一緒だ。)
Z : ん、おやすみ……
ハーヴィ : ≪おやすみ!≫(寝転がったまま、嬉しそうな吐息が漏れる。)
シャノア : おやすみなさいまし……
Z : (慣れない外での戦闘に見かけより疲労がたまっていたのか、そのまますとんと眠った…)
ハーヴィ : (寝返りを打って、天を向いた端末を見ることは叶わないだろうが。)
ハーヴィ : (≪みんな大好き!≫。ただ一行。画面が暗くなる。)
ハーヴィ : (もっともらしい嘘が、穏やかな寝息を立て始めた。)