イミテイター、二機
- wisteria8770
- 2024年2月2日
- 読了時間: 5分

ジレイさんと。デスポエムのおまけ付
[2049]は[安全第一]になった
ジレイ : む!!!!!
[2049] : (声の方へわずかに視線が動き、)
アルトは[安全第一]になった
[2049] : (すい、と横移動。お邪魔はしませんよのアピールか。)
ジレイ : (この街には少し珍しい、将校の恰好をしたイミテイターは、あなたに興味を持ったようにじろじろと見つめるものの……)
[2049] : …… (何を言うでもなく、動きが止まる。視線は同じようにあなたのほうを向いている)
ジレイ : (沈黙の帳、数秒)
ジレイ : 貴様イミテイターか!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ジレイ : (その人形めいた手足を見てそう、クソうるせえ声をあげた。)
[2049] : ……。(沈黙……。しかし一瞬驚いたように肩が上下した、かもしれない。)
[2049] : (こくり、ひとつ頷く)
ジレイ : (ずいずいずいと近づいて、)
ジレイ : (きっとその振る舞いは人によっては威圧感を感じるそれだ)
[2049] : (恐らく何らかの業務での確認だろう。こちらも一歩近付く)
アルトは[安全第一]になった
アルト : (軽く横を通り過ぎて。手を振った)
ジレイ : (先ほどあった人物に視線を投げ)俺はラインシャッハ軍人、所属は第二特別機動魔導歩兵小隊隊長、製造名はRW201
[2049] : (通り過ぎていった人影に一度視線を外したが、無表情のまま見上げ。胸元の端末に指をかけ)
ジレイ : (なにかの詠唱のように告げ、あなたの出方を待った。)
[2049] : (端末を取り外すと。あなたの顔の前に控えめに出す。)
[2049] : ≪RB社製、MA型。製造番号2049。 軍の方か≫
[2049] : (そんな文字が、表示されていた)
ジレイ : (頷く)MA型──確か興行目的に作られたと聞く。
ジレイ : ……喋れんのか?
[2049] : ≪音声回路に不具合があるためこの端末を使用している。無礼を許してくれ。≫
[2049] : (その表情と同じように、表示される文字もまた素っ気ない)
[2049] : ≪興行用、の認識で間違いはないが、本機にその役割はない。了承されたし。≫
ジレイ : む! では不躾な質問かもしれんが……。
ジレイ : 貴様の役割は一体? いや何、俺は視察をしに来たのだ。このバベルの現状を知らねばならない。
[2049] : ≪| ≫(文字の表示が一度止まる。少しの間入力中を表すバーが明滅し)
[2049] : ≪見回りと、暴走したイミテイターの駆除。を、命じられている。≫
ジレイ : (男は見ての通り不遜だった。他者に踏み込むことを全く躊躇わない。)
[2049] : (ただの文字、にしてはやけに持ち主の意図を汲んだような文章を書き起こすそれを持ったまま、やはり表情は変わらない。)
[2049] : ≪視察、だったか。わたしに答えられる事項は少ないと思うが、それでも良いのであれば。≫
[2049] : ≪こんな場所を今更視察してなんになるのか、という疑問はあるが。≫
ジレイ : 興行用にしてはやけに落ち着いているな……。
ジレイ : まあいい! よく励むと良い。(叶うのであれば、肩をばしばしと叩く。)
[2049] : ≪それについては回答しな≫(表示が終わる前に、叩かれた肩ごと身体が揺れ)
[2049] : ン、(はじめて、少し困ったような表情を見せた。)
[2049] : ≪失礼した。また必要があれば声を掛けてほしい。≫
ジレイ : 無論!!!! ここはもうじき解体される。その前に、在住している人間様とイミテイターの状態を把握しておかなければならない故な。
ジレイ : 貴様、ここにどれくらい所在している?
[2049] : ≪理解している。イミテイターは資源価値がある。≫
[2049] : ≪……約、11年ほど。≫
ジレイ : ……、(常にどこを見ているのか分からない、少し怖いと称されるその瞳が見開かれた。)
ジレイ : 貴様バベル稼働当時からのイミテイターか!?
[2049] : (また、少し肩を縮こまらせる。無表情の中に、時折そんな仕草を混ぜて)
[2049] : ≪その認識で間違いない。と、思うが。それが何か。≫
ジレイ : (RW201は華々しい経歴を持つイミテイターだった。そしてそのパーソナリティは──)
ジレイ : (恐らく、ニガテなものもおおい。タチが悪いのは、そこに一切の悪意が含まれていないことだ。)
ジレイ : いやはや驚いたぞ! 今日までよくぞ働き続けてくれた! 中央に伝えたらきっと喜ばれるぞ。
ジレイ : バベル解体の日までもうじきだ。自らの行いを誇ると良い!
[2049] : ≪ ≫ (また、流暢に『喋る』端末の動きが止まり)
ジレイ : (そうして、また彼の肩を叩いた。叶うなら。)
[2049] : ≪あちらでは、本機はそのように評価されるのだろうか。ならばそれを心に刻み、来たる日を迎えたいと思う。≫
[2049] : (されるがまま、肩を叩かれて。端末はまた流暢に喋り出す)
ジレイ : 素晴らしい!!! 貴様はとても模範的なイミテイターだな。
[2049] : ≪そのように努めている。模範行動と認められるのであれば光栄だ。それが本国からの遣いであればなおさら。≫
ジレイ : (うんうん、と頷いて)さて、立ち話をさせてしまったな。俺はこれから資材を交換してくる。
[2049] : ≪問題はない。それがあなたの仕事だろう。≫
ジレイ : ああ。この街にいるならいずれまた会うだろう。では!
[2049] : ≪ああ、必要があれば使ってほしい。それでは。≫
ジレイ : (そうして顎で応答をすれば、その場を後にするだろう。)
ジレイ : (……安心するといい。そこに悪意などは存在しない。)
ジレイ : (中央からきた、旧型の男にとっては、これが”普通”で”模範的”なのだ。)
[2049] : (小さく敬礼をした。)
[2049] : (作業場を過ぎて、そのまままっすぐ。迷うことなくそこに辿り着き)
[2049] : (腰を下ろして息を吐く。否、息のように見える、上下運動と空気の出し入れを。)
[2049] : (誰もいない。そこに”あるだけ”の、人もどきだった塊を除いたら。)
[2049] : (──褒められた。イミテイターらしくある自分を。)
[2049] : (── 認められた。イミテイターらしさが、人間性の上位であることを。)
[2049] : (だから、今日も)
[2049] : (── 上手くいった。RB2049-MAは、その性能を遺憾なく発揮して。)
[2049] : (”イミテイターであること”を、演じる事ができた。)
[2049] : (30日と、もう何日か。長かったそれももうすぐ終わる。)
[2049]は、汚れたぬいぐるみを使った。
もふ…
[2049] : ……
[2049] : (小さく口を開き)
[2049] : ……二転の冠は千切れてパラドクスに浮遊していてね
[2049] : (そんな言葉以下の音を、小さく、ぬいぐるみに向かって吐き出し)
[2049] : (2049は、今日の活動を停止した。)