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LOGS

ONLY LONELY GLORY


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テラ : (ずり…ずり…)

テラ : (でっけぇ棺桶みたいな鉄の箱を運んでいる……)

ハーヴィ : (扉の開く音がして、なにか書類のようなものを持って出てくる。音に気が付き)


ハーヴィ : ン? (顔を覗かせ)

テラ : ン?

ハーヴィ : ン!


テラ : (振り向いた)(棺桶?をぶつけたガンッッッッ)

テラ : こんばんは、ハーヴィ。

ハーヴィ : !?


ハーヴィ : ≪え、大丈夫今の。こんばんは。≫

テラ : しまった、ぶつけた…… まぁ丈夫だから大丈夫だろう じょうぶだけにな

ハーヴィ : ……

テラ : はい

ハーヴィ : ……… ≪それはなにですか?≫ (外国語の例文のような文字と共にスルーした)


テラ : その、色々立て込んでてしっかり話せないですまないな 俺が外に出ることとか……

テラ : これは、ジレイの新しい機体だ

テラ : 厭だと拒否られたら新しいのを探さないといけない。確認してもらおうとしている

ハーヴィ : ≪ううん、みんな忙しいのは一緒だから仕方ないよ。オレはテラが元気ならそれでいいし。≫

ハーヴィ : ≪ジレイの…… お乗り換え!?≫ ≪え、それをぶつけたの今≫


テラ : 俺の兄機、 A04のスペアボディの改装体だ。非常に丈夫で…… RW201にスゴク似ている

テラ : (お元気イミテイター。ムキムキポーズ)

ハーヴィ : ≪ああ……。≫ (と、曖昧な納得を示し。テラというイミテイターとジレイの関係については、昨日本人から聞いたばかりだ。)

テラ : ……えっと、俺にとっては黒歴史なんだが

テラ : 俺の開発会社はRW201と大変ライバル視していてな……

ハーヴィ : (こく、こく)


テラ : 俺より前のTBシリーズはRW201にスッゴイにせられていた……

ハーヴィ : ≪テラよりもっと似てるってこと?≫

テラ : ちょっとみるか。ほぼそのままだ

テラ : (立てかけて、プシューッと煙が出て、棺桶が開く)

ハーヴィ : ≪いいの? オレが見ちゃって。……って言ってもお乗り換えしたらどのみち見るか。≫ (覗き込み)

テラ : (……ジレイそのものが眠っている……一糸まとわぬ縁起でもない姿)

テラ : 似てるね……

ハーヴィ : ≪に、似てる……。≫


テラ : さらに俺のOS(思い出システム)と思考モジュールにはA04からA12までのものが統合されている

テラ : 俺には、このボディだった時代の記憶があるということだ

ハーヴィ : ……

テラ : ……恥ずかしい

テラ : 幼い頃なんでもあこがれの人のマネをしていたとバラされる気分

ハーヴィ : ≪それは……。≫

ハーヴィ : ≪すごく、なんというか、≫

ハーヴィ : ≪なんとも言えない気分になるね……。≫

テラ : 気まずくなりそう

テラ : (ガコン、と箱が閉じる)


テラ : ……ハーヴィにも伺うか

ハーヴィ : (ばいばい…と閉じられる棺に手を振って)

テラ : A04が役目を終えたのは半世紀近く前。 何故、これがこんなに状態良く、バベルに存在するのか‥…

ハーヴィ : (あなたのほうを見て) ≪スペア、にしてもだよね。≫


テラ : ……俺の主、ティアマト様の研究所に、何故かあった……厳重に秘匿キーで封鎖されて

テラ : なんであったのか、俺にはわからない……

テラ : 本当になんで……?

テラ : ハーヴィ、わかる?

テラ : 本当はRW201のほうが好きだったとか……!?

ハーヴィ : ≪え、テラがわかんないのにオレにはわかんないよ……。≫


テラ : やだ・・・・・・・・・・・・

ハーヴィ : ≪落ち着いて≫

テラ : スゥーーー

テラ : 落ち着いた

ハーヴィ : ≪ヨシ。≫


ハーヴィ : ≪……残しておいてくれたとか? テラに何かがあった時のために。≫

テラ : 深く考えるのはよそう。 とても多彩な演算を行えるハーヴィにもわからないなら仕方ない

テラ : ……

テラ : 回路も火のマナに改装済みで、9割ジレイなんだよな…

ハーヴィ : ……


テラ : とても俺に使えるボディじゃない

ハーヴィ : ≪ジレイのほうが好きだったのかな?≫

テラ : ァアアア

テラ : やだーっ

ハーヴィ : ≪ワガママ言わないの!≫

テラ : (ダメイミテイターになってしまった)


テラ : まぁ……もう、この世で真意を確認する術はない

テラ : 急に重い話になってすまないが、俺の主、ティアマト様は……もう、亡くなられていた

ハーヴィ : ≪……置いた人に聞くのが一番早いと思うけど、何かがあったからあったのには間違いないよね。うーん、なんだろ……。≫ ≪………。≫

テラ : 故に俺は、待機命令を解除されて、バベルを出れる権利を得た


ハーヴィ : ≪……ごめん、なんとなくだけど、≫

ハーヴィ : ≪そうなのかな、って思ってた。≫

テラ : ……勘がいいな。 まぁ、ティアマト様がご帰還なされないのに、俺が外に出れるということはそういう事

テラ : 色々混乱していて、度々迷惑かけるかもしれん

ハーヴィ : ≪明るい理由じゃない、とも言っていたし。≫ ≪……ううん、大丈夫。オレに出来ることなら協力するから。≫

テラ : ……ありがとう。俺を縛っていた命令は大半が解除されてしまった。そして代わりに、自由に生きろ、と仰せつかった

テラ : ジレイには既に多大な苦労をかけてしまった。これからもそうだろう

ハーヴィ : ≪……そう。大変な命令だね。≫

テラ : ……俺は元々結構な不良だった。 なんとかうまくやっていく


ハーヴィ : (頷き。)≪何かあったら息抜きにでも遊びに来てよ。リーンのほうで借りる部屋の近く、色々あるみたいだからさ。散歩ついでにでも。≫

テラ : あぁ。もちろん。こちらの家にも遊びに来てくれ、また地図を転送する。 でかでかやマリヤにも会いに来てくれ

テラ : あと、タケナカさんも

ハーヴィ : ≪嬉しい! ふわふわ連れて行くからね!≫

ハーヴィ : ≪……でもホント良かったよ。オレがタケナカさんのこと預かる事にならなくてさ。≫

テラ : 割と本気で考えていた…… でも、ジレイとマリヤが俺をつなぎとめてくれた


テラ : タケナカさんとでかでかをこれからも元気元気にお手入れしてあげないとな

ハーヴィ : ≪ならいいんだ。 ……うん。ふわふわはオレが元気にするから、テラはふたりの事よろしくね。≫

テラ : コリン様とSPMにも再びよろしくな

テラ : さて、そろそろジレイに見せに行かないと

ハーヴィ : ≪……改めて。おかえり。≫ ≪もちろん。二人にもちゃんと伝えるよ。≫

テラ : ジレイのことを窓からぶん投げたら許してくれ

ハーヴィ : ≪あ、うん! 行ってらっしゃい!≫ ≪……あ、その前にちょっとだけ!≫

テラ : ん?

ハーヴィ : ……(窓から投げる、はおいといて)


トレードを要請しました。

ハーヴィ : ≪クランクアップの花束、用意しておくって言ったでしょ。≫


相手プレイヤーの決定を待っています。
トレードが成立しました。

テラ : 覚えていたのか……

ハーヴィ : ≪花束って言うにはちょっとショボいけど。≫ (声もなく笑う仕草)

テラ : ……12日には、俺からもお返しを届けないとな

テラ : 素敵だ。額縁に入れて、新しい家に飾るか

ハーヴィ : ≪うん。お返し楽しみにしてる。≫

ハーヴィ : ≪えへへ、気に入ってくれたら嬉しいな!≫

テラ : あぁ、名残惜しくなってずっと話してしまう

テラ : 炎の王様をこれ以上待たせてはならんな

ハーヴィ : ≪早くジレイんとこ行ってあげないとね。≫


ハーヴィ : ≪それじゃ改めて。≫

ハーヴィ : ≪お疲れ様、おかえり、≫ ≪行ってらっしゃい!≫

テラ : (棺桶(ではない)を持ち上げる)

テラ : ……ただいま。 そして、いってきます

ハーヴィ : ン!!

テラ : (がしょがしょいわしながら)

テラ : (去っていく)

ハーヴィ : (手を振って見送った)




ハーヴィ : (瓦礫の隙間を縫いながら、、建造物から建造物を飛び移りながら、やがて工場に辿り着けば、更にその奥、廃棄場。そこから更に暗がりへ足を踏み入れれば。)

ハーヴィ : (辿り着いたのは、ゴミ捨て場。バベルの、さまざまなものが捨てられて、終わっていく場所。)

ハーヴィ : (青年のはじまりの場所。)


ハーヴィ : (回想 ──オーナーに連れられてここに置き去りにされたこと / 人間に捨てられたぬいぐるみと出会ったこと / 途方に暮れた心を守るために[2049]が生まれたこと。)

ハーヴィ : (明日、この街を出る。大好きなみんなと一緒に。 ……同じ場所に行かないとしても。)

ハーヴィ : (青年には、その前にひとつだけ。やっておかなければならない事があった。)


ハーヴィは、筆記具を使った。

ハーヴィ : (書き付ける文字。"RB2049-MA"。それだけ書いたページを破り。)


焼却炉だ。何かを捨ててしまおうか。
何を燃やす?

ハーヴィが[RB2049-MA]を入力しました

RB2049-MAを焼却した。

ハーヴィ : ……

ハーヴィ : (システムを、起動する。)


ハーヴィ : ≪#L = T " I" R≫
≪コード実行 // ”ACCELERATION”≫

ハーヴィ : 2049、ありがとう。


ハーヴィ : ≪#L = T " I" R≫
≪コード実行 // ”ACCELERATION”≫

ハーヴィ : きみのお陰で生きてこれた。

ハーヴィ : (2回目。一日の上限。)


ハーヴィ : ≪#L = T " I" R≫
≪コード実行 // ”ACCELERATION”≫

ハーヴィ : 置いていってごめんね。


ハーヴィ : ≪#L = T " I" R≫
≪コード実行 // ”ACCELERATION”≫

ハーヴィ : ……、

ハーヴィ : おねえちゃんたちに

ハーヴィ : …… ……


ハーヴィ : ≪#L = T " I" R≫
≪コード実行 // ”ACCELERATION”≫

ハーヴィ : よろ、しくね


ハーヴィ : (自己ハッキング。その中でも音声回路への介入は、それと結び付いた青年の思考演算へ負荷をかける行為。)

ハーヴィ : (──負荷をかけ続ければ、己が己ではなくなる可能性を孕んでいる。)


ハーヴィ : ……。 ≪#L = T " I" R≫
≪コード実行 // ”ACCELERATION”≫

ハーヴィ : オレが、そっち


ハーヴィ : ≪#L = T " I" R≫
≪コード実行 // ”ACCELERATION”≫

ハーヴィ : 行くま デ 


ハーヴィ : ……ッ、


ハーヴィ : ≪#L = T " I" R≫
≪コード実行 // ”ACCELERATION”≫

ハーヴィ : ま taね、


ハーヴィ : ≪#L = T " I" R≫
≪コード実行 // ”ACCELERATION”≫

ハーヴィ : (ノイズ音。)──2049.


ハーヴィ :

ハーヴィ : (禊が終われば、青年は。)

ハーヴィ : (ふらつく足取りで、その場を後にした。)


ハーヴィ : (これで、この街でやるべき事は、すべて。)

ハーヴィ : (だから、帰ろう。自分の居るべき場所へ。)


ハーヴィ : (RB2049-MAが守り抜いた、ハーヴィの居場所へ。)




 2023 by ROUTE87 / 大槻

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