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Beautiful morning with you

更新日:2024年2月13日


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コリン : そ、そっか……。なんか悪いな。

Z : 構わないよ、慣れてるし。割ったの僕だし。


Zは、紅茶を使った。

Zは紅茶を啜った。

Zは4回復した。  ([1]+3)


コリンは、紅茶を使った。

コリンは紅茶を啜った。

コリンは4回復した。  ([1]+3)


Z : (砂糖を大量に入れて飲む)

コリン : ???

コリン : 入れすぎじゃね!?

Z : ……普通だけど?


ハーヴィは[瓦礫に紛れる]でなくなった


ハーヴィ : (控えめなノックの音と共に顔を出し──) (取り込み中っぽい。退散…)

コリン : おれでもそんなに入れねーよ……。ん?(小さなノックの音に振り返る。)

コリン : あ!ハーヴィ!(友人の姿を認めると、明るく笑う。嬉しそうだ。)

Z : っと。ようこそハーヴィ(軽く手を振った。雑談していた程度なので家主は全く構わないらしい)

ハーヴィ : (邪魔にならないようめちゃめちゃ静かにドアを開けようと試みているところだった)

ハーヴィ : ≪ほんと? 上がってもいい?≫

Z : 勿論だとも。

コリン : うん! って、ここゼータの家だった。でも、ゼータもこう言ってるし。

ハーヴィ : (そう言われれば、素直に表情を明るくさせて。)

ハーヴィ : ≪よかった! ほんとは会いたかったんだ。≫

ハーヴィ : ≪お邪魔します!≫

コリン : へへ、ほんと?嬉しいな。 おれもハーヴィに会いたかったからさ。

Z : 席らしい席がなくて悪いね。どうぞ。

ハーヴィ : ン! (あなたたちの近くへ寄れば、シャノアへも手を振り)


シャノア : ……あ、おはようございます。

コリン : シャノアも起きてた?(やってきたあなたが手を振ったのを見れば、シャノアの方へ目をやり)

コリン : おはよ、シャノア。

ハーヴィ : ≪おはよ、お疲れ様!≫

Z : あ、おはようシャノア…… ……ごめん戻る体力がなかったみたいで。来てくれてありがとう(小声で添えた)

シャノア : いえ……殆ど居ただけですから。


コリン : そうだ、ゼータ。相談したいことだったんだけどさ。

ハーヴィ : ? (小首を傾げ)

Z : なんだい。

ハーヴィ : (にこにこと、この場にいられるの自体が嬉しいといった様子で話に耳を傾けている)

コリン : シュガーの話なんだ。遊園地を案内してもらったって言ったろ?

コリン : その時に、なんか……、壊れかけてた、っていうか……。様子がおかしくってさ。

ハーヴィ : (……と、少しばかり表情が強張る。)

ハーヴィ : (下を向き)

Z : シュガーの。……彼女は今までそう問題がなかったように見ているけれど。壊れかけ、様子がおかしい……どのように?


コリン : うん、ええと……。(思い出しながら説明をする。)(シュガーにしたいことや考えてることがあるなら、我慢をしなくてもいいと言ったこと。)(すると、彼女はノイズを発し始めたこと。)(同時に胸元で光が点滅していたこと。)(それから、)

コリン : 途切れ途切れの声で、「ハーヴィさんとなかよしでいてくださいね」って……。そう言ってくれたんだ。

ハーヴィ : ……!

Z : ……なるほど…。

ハーヴィ : ≪あの、それ、≫(……と、悩むようにゆっくりと文字が現れる。)

ハーヴィ : ≪オレも、相談したくて。今日はそれで、来た……。≫

Z : (光文字を見遣り)

コリン : その後すぐにいつものシュガーに戻ったんだけどさ。

コリン : サーカスとか劇場とか、案内してもらったんだけど、ずっと、いつものシュガーだった。

コリン : 壊れかけそうになってたことなんてなかったみたいにさ……。


シャノア : ……なんとなく理由は推測できます。

ハーヴィ : ≪……プロテクト、≫

Z : 二人とも同じ相談だったってこと?フフ…… そうだね、恐らくは。

ハーヴィ : ≪掛かってるよね? エムトハは、なんとも言えないって言ってたけど。≫

コリン : ぷろてくと?

ハーヴィ : ≪ずっと、必死で伝えようとしてた。……と、思う。 ≫ ≪たぶん、自分の気持ちを。≫

コリン : ……!

ハーヴィ : (コリンの疑問に頷き)≪言えることとか、やれることに制限がかけられて、したい事ができないかも ってこと。≫

Z : より人に近いコミュニケーションを可能とするモデルは複雑な自律思考と感情モジュールを備える。それらを統制したり抑圧したりするためにロックを…そう、制限をかけることがあるんだ。

コリン : そ、そんなのあんの……!? でも、ハーヴィとかシャノアは普通に喋ってる、よな……!?

シャノア : 本来遂行するべき役割を逸脱しないために、例外処理に対してどう対応するかは個体によって変わります。

ハーヴィ : ≪……オレにはない。オレは演劇用の…… ヒトの感情を再現するのが一番の目的だったし、それに、≫

ハーヴィ : ≪そもそもオレは劇場に『卸されなかった』から、そういうのは要らなかった。おねえちゃんたちとは違って。≫

ハーヴィ : ≪でも、ポップはそうじゃないのかもしれない。≫


コリン : それも、イミテイターによって違うってことか……。…………(視線を紅茶へ落とす。何度も点滅する胸元の光の意味を、ようやく薄っすらと理解した。)

コリン : ゼータならそういうの、外せないのか……?

Z : シュガーは遊園地に配備された娯楽用イミテイターだったね。…彼女の役割にそぐわない言動は規制されているのかもしれないな。

Z : ……わかった。やってみるよ。

ハーヴィ : ≪一応、エムトハが機転を利かせて『ちゃんとしたメンテナンスを受けたらどうだ』って言ってくれて……≫ ≪本当!?≫

コリン : ほんとか!?ゼータすげえ!!

シャノア : 私としてはあまり推奨はできませんが……もし行うのであれば、あらゆる不測の事態に備える必要があります。

ハーヴィ : (一瞬表情が明るくなったが、次の言葉ですぐにまたしゅんと)

コリン : おれ、ちゃんとシュガーとお喋りしたいし、前みたいに押し付けたりしたくないから、シュガーの言葉で良いか悪いか、ちゃんと聞きたいし……、 不測の事態?

ハーヴィ : ≪……もし厳重なプロテクトなら、ポップの基底データに損害が出るかも……って、事でしょ>≫

Z : 点検も兼ねてね。……概ねその通り。

コリン : きていデータ、に損害が出たら、どうなるんだ……?

シャノア : 良い結果にしろ悪い結果にしろ、本来の想定を逸脱した運用となる為です。処理後の行動予測が非常に難しくなります。

ハーヴィ : ≪ポップがいなくなる。≫ ≪簡単に言うと≫

コリン : えっ、そ、それは絶対ヤだ!


ハーヴィ : ≪オレの、これ(声帯)もそうだから、修理できないし。やろうとしてる事はわかってる、つもり……。≫

Z : 本来の用途では制限を外すことは想定されていないだろうから、暴走や機能停止の危険性がないわけでもない…そうなるようなら、勿論中止するつもりではあるけど。

シャノア : ……これは例え話ですが、理性やルールの枷が外れて暴力的行為や非倫理的行動に走る、そういう者は多く犯罪者と呼ばれますが。

シャノア : 構造上、手を加えるということはこれに近く、起きないとはまったく言えないわけではないのです。

ハーヴィ : (しょぼ…)

シャノア : もちろん、基礎となる疑似人格が存在している以上はそれが行動軸となるはずですが

シャノア : 問題は、そこに何が影響するか、というところになります。

コリン : (隣のあなたと同じく、しょぼ……になった)

コリン : でも、ゼータはすげえ技師なんだろ……?そういうのも全部、なんとか出来ねーのか……?(やたらと技師のあなたに対して信頼があった。)(それは同い年だからであり、少年特有の過信の表れだ。)

ハーヴィ : (落ち着きのない様子で手に持った端末の端をかりかりと引っ掻き)

Z : まあそんなに悲観することはないさ。あくまで可能性の話。それに、興行用娯楽目的で作られた…ううん、少なくとも僕らの知るシュガーが、そう本来の目的から逸脱するようにできているとは考えにくい。

ハーヴィ : (こく、こく)

Z : 技師としてやれるだけはやるよ。任せて。

コリン : うん……そっか、そうだよな。全部まだ、決まったわけじゃないもんな。

シャノア : 私としては開放前の解析を推奨します……あの子の過去を、私達は多く知りません。


ハーヴィ : ≪言いたいときに言えない事も、≫ ≪泣きたい時に泣けない事も、≫ ≪苦しいの、わかるから。≫ ≪オレは可能性に賭けたい。≫

Z : ……ああ。

ハーヴィ : (”可能性”に”賭ける”などという、イミテイターの合理性から外れた文字を、映し出し。)

コリン : うん。おれもシュガーのあんな苦しそうな……、"声"、あんまり聴きたくないしな。(ノイズ音を"声"と表す。きっと、そちらの方が相応しいと少年は考えたから。)

コリン : それに、あの時シュガーが頑張って伝えてくれたことが、「ハーヴィと仲良くしてほしい」ってことなら、

コリン : ぷろてくとって奴が外れた後も、シュガーは悪い奴になったりしないって!

ハーヴィ : ……! ≪……うん!≫

コリン : でも、そーなるとまずシュガー連れてこないとだよな。

ハーヴィ : (こくこく)≪具体的にいつメンテをしようって話はしてないし。ゼータに相談するのが先だと思って……。≫

コリン : 今度ゼータがいるって分かってる時にシュガー連れてくるか。ゼータを遊園地に連れてった方が良いか?


ハーヴィ : ≪遊園地たのしかったよ。いっぱい食べた。≫(にぱ…と感想の報告。)

コリン : あ、ハーヴィも遊園地行ったのか!? おれもこないだ行ったんだ!すげー楽しかった!

Z : どちらでも構わないよ。直接赴いたほうが早いかな…

ハーヴィ : ≪行った! 昨日! また行きたい! 今度は一緒に行こうね!!≫

コリン : へへ、おれもシュガーに言ったんだ!今度はハーヴィと来たいなって。

Z : (微笑ましいげに眺めた)

ハーヴィ : ≪えへへ、嬉しいな。みんなで行こうね。≫

ハーヴィ : ≪……けど実際、こっちから行った方が会える確率は高いよね。遊園地がおうちって言ってるし……。≫

コリン : ああ、ゼータもシャノアも、行こうな!

ハーヴィ : (にぱ~~~~っ!!!)

コリン : ん、じゃあシュガーに聞いてみるか。今遊園地にいるか、ってさ。

シャノア : 以前誘われてましたから、ある意味いい機会ではありますね。

コリン : (そう言えば情報端末を取り出し)

ハーヴィ : ≪そういえばそういう手があったね……。≫(とにかく他者を避けまくってきた青年に、通信で呼び出すという発想はなかった。≫

Z : 遊園地ではしゃぐ年でも……コホンッいつ楽しんでも良い……うむ、うむ……。(ビーカーの砂糖だらけ紅茶をすっかり飲み干した)

ハーヴィ : (底に砂糖固まってない? ハーヴィはいぶかしんだ。)

コリン : ま、まあ確かにそうだけど? でも、シュガーのジャグリングはすげーんだぜ!

ハーヴィ : ≪楽しいのに年齢って関係あるの?≫

ハーヴィ : (きょとん…)

コリン : えっ

コリン : (ゼータの顔を見た)

Z : …な、なんとなく子供っぽい気がしててあんまり行ったことがないだけだよ……(気まずそうにぼそぼそ呟いた。根がだいぶ陰気なのであった…)

コリン : えっ、えーっと。その、あれだ。おれたちはかっこいいものの方が好きだから……。(ゼータを巻き込んだ)

Z : (巻き込まれた…)


コリン : っと、シュガーから返信来たや。 工場の仕事してたから、こっちまで来てくれるってさ

ハーヴィ : ≪でも楽しいって思ってるのに我慢したり、行きたいの我慢するの、勿体ないよ。オレみたいになっちゃうよ?≫

Z : 考慮しておこう……読書や機械弄りだけでは得られない経験を……っと。シュガーって遊園地だけでなく工場でも勤務してるんだね。

コリン : べっ、別に我慢してるわけじゃないんだぜ?あっ、でも楽しくなかったわけじゃなくって、 えーっとだな……(上手い言い訳が出てこなかった。)


シュガーポップムーン : (コンコンコン。ノックの音が響く。)

コリン : あっ!シュガーだ!

シャノア : はーい。(扉越しに返事をかえして)

コリン : (話題を逸らした!)

ハーヴィ : ? (少年ふたりの反応に小首を傾げつつ)


シュガーポップムーンは[瓦礫に紛れる]でなくなった


シュガーポップムーン : (ひょこ!扉が開かれて入って来る。)

Z : ようこそシュガー。どうぞ上がってくれたまえ。

シャノア : こんにちは、シュガー。

ハーヴィ : (にぱ! 入ってきた少女へ手を振った)

シュガーポップムーン : おつかれさまですっ!わ~っ!シャノアさんっ!(目の前のイミテイターにはぴょんぴょんした。)

コリン : シュガー、急に来てもらってありがとな。

シュガーポップムーン : こんにちは、こんばんは!ゼータ様、コリン様、ハーヴィさんもおつかれさまですっ!お邪魔しますね~っ!

コリン : シュガーの好きなとこに座って良いんだぜ。

シュガーポップムーン : (うろうろうろ)(ぴた)

ハーヴィ : (人んちだが、遠慮なく手招き)

Z : (工房内は工具類や材料が転がり雑然としている…軽く手を振り招いた)

シュガーポップムーン : ・ ・ ・

シュガーポップムーン : (座る場所を判断するのに時間が掛かっているらしい。)

コリン : シュガー?(首を傾げる。)


Z : 一応作業台のほうに来てもらおうか。こちらへ(簡易的な寝台のようなそれを示した…)

コリン : ん、そっか。メンテナンス、だもんな。

シュガーポップムーン : はいっ!ゼータ様!(そう言われればその通りに動く。)

シュガーポップムーン : (すとん!寝台に座る。)

コリン : (少年も作業台の方へ近寄っていく。寝台に座るあなたの胸元へ、視線をやった。)

ハーヴィ : (なんとなく緊張した様子でコリンの近くへ移動し)

コリン : ……ゼータなんだから大丈夫だって。(緊張した様子のあなたには、そっと指先を手の甲へと触れさせた。)

シュガーポップムーン : メンテナンスですねっ!よろしくお願いしますっ!

Z : 話はコリンとハーヴィから伺っているよ。君のプロテクトの解除……前にメンテナンスを兼ねて解析をする。いいかい。

ハーヴィ : ン……(許されるなら、触れた指先はあなたの指へと動き。数本を軽く握るだろう。)

シュガーポップムーン : プロテクトの解除、ですか? ??

ハーヴィ : ……

シュガーポップムーン : メンテナンスですか? 解析ですか?

コリン : (ぎゅ。同じくあなたの指を握りこむように。)

コリン : あ、えっとな、シュガー。

ハーヴィ : ≪エムトハも言ってたでしょ。健康診断…… 的なもの。≫ ≪ごめん、ポップが心配で、オレがゼータに相談したんだ。≫

コリン : シュガー、前に遊園地でその、"苦しそう"だったろ。(あなたの胸元がちかちか光って、壊れかけみたいな音を発して、それでも、言葉を紡いだ時のことをそう表した。)


Z : (いきさつの説明は二人に任せたほうが良いだろうと、外部からスキャンに留め観察している)

コリン : おれ、シュガーが心配でさ。おれもゼータに相談したんだ。

コリン : そしたら、プロテクトのこと教えてもらって……。

シュガーポップムーン : はいっ!健康診断ですねっ!みんなでけんこ~になりましょ~っ!(そう言って笑顔を浮かべて、“苦しそう”の言葉には首を傾げた。)

コリン : おれは、シュガーに「ハーヴィと仲良しでいてくださいね」って言われたの、嬉しかった。

コリン : もし、もしも、あの言葉が、シュガーの"ほんと"なら。

コリン : おれは"ほんと"のシュガーとも、いっぱいお話したいんだ。

シャノア : ……。


ハーヴィ : ≪ごめん、昨日はちゃんと言えなかったけど。≫

ハーヴィ : ≪……ポップが、何かをオレに言おうとしてくれたの、わかってる≫ ≪から。≫

ハーヴィ : ≪オレも、コリンと同じ気持ち。≫

コリン : (握った手に、少し力を籠める。一緒で嬉しい、なんて声には出さずに伝えたつもりで。)

ハーヴィ : (同じような強さで握り返し、ほんの少しだけ身を寄せるだろう。)

コリン : だから、シュガーが嫌じゃなかったらさ。プロテクトを外せないか、試させてほしいんだ。

コリン : そうじゃなくてもメンテナンスは受けてほしいけどな。

ハーヴィ : ……! (こくこく) ≪セルフメンテ続きだって言ってたのは、素直に心配。≫


シュガーポップムーンは、イミテイトハートを使った。

【 処理中... ❘■■■■■■❘ 99.9999% 】


シュガーポップムーン : じゃあじゃあっ、わたしメンテナンスを受けたら、みなさん笑顔ではぴはぴですかっ?

ハーヴィ : ……。(一度、大きく頷いた。)

ハーヴィ : ≪それが、ポップの笑顔のためでもあってほしい。≫

シュガーポップムーン : はいっ!シュガーポップムーンは人間様にドキドキワクワクの笑顔をお届けするのが役割ですっ!

コリン : うん……、うんっ。おれも、ハーヴィと一緒。

コリン : おれがシュガーに、壊れないでほしい。って思ってるのも、あるけどさ。 シュガーが笑顔でいるためだったら、良いなって思う。

シュガーポップムーン : (にこ!)(いつも通りの笑顔を浮かべている。)

ハーヴィ : ≪……形式上の同意は得られた、って思っていいのかな。≫

ハーヴィ : (むろん、それを言えないだろうからこうなっているのではあるが。)

Z : ……(頷き、一瞬表情を柔らかくし、すぐに整備士の顔つきに戻った)

Z : 作業を開始しよう。……


Zは、サードアイを使った。

サードアイがうごめいた。

Zは[観察]になった


コリン : うん、頼むぜ。ゼータ。


Zは、スパナを使った。

Zは修理を開始した。


ハーヴィ : (頷く。正直、怖い。これがいいことなのか、正しい事なのか。それでも信じたかった、このエンジニアの少年の事も、シュガーポップムーンの本当の気持ちも。)

シュガーポップムーン : (イミテイターは“人間様”の作業を受け入れる。)

Z : (損傷個所がないか。動作上の問題点はないか。慣れた手つきでメンテナンスを行っていく。マナを集中させれば、ほのかな光が蝋燭のように灯る)

シュガーポップムーン : (損傷個所:表面素材の軽度の擦過傷。)(動作上の問題点も無い。)(ただ衣装の下、胸元に後付けされている部品が時折点滅を繰り返している。)

ハーヴィ : (胸元の点滅。 ……何かが起こる時の前兆か、それとも起こっているからそうなのか。けれど確かに、それが光る時に彼女は。)

コリン : (じっとメンテナンスの様子を黙って見守る。珍しく緊張した様子が、指先から伝わってくるだろう。)

Z : (軽微な外傷であれば、手元の材料を用いて修繕を施しておいた)(明滅する部品に僅か目を眇め、注意深くそれを見た。解析の術式を刻む)


シュガーポップムーン : (【解析を】)(【進めますか?】)

Z : ……(進める。慎重に、構成する要素・情報を紐解く。外見からではわからないそれを)

シュガーポップムーン : (そうしてゼータへ、人間様へ表示される。)

Z : (情報を読み込む、間)(わずかに指先が震えた)

シャノア : ……マスター?

ハーヴィ : (頼んだ時から、予想は出来ていた。 ──『あまりよいものではない』と。 少年の指の先の震えは、その予想を反映したもの、だろうか。)

Z : (静かに、ゆっくりと呼吸を整える)……大丈夫。


シャノア : 外部処理が必要ならオペレートしますので、都度ご指示を。

Z : 思考調整部品は外付けされている。解除は構造上の問題はないと判断する。

ハーヴィ : (安堵の息──それを模倣した空気の出し入れの音がする。)

コリン : ほんとかっ!(技師であるあなたの言葉に少年の顔が綻んだ。)

Z : (言葉として出力される筈だったものを炉心へ棄却するパーツの、解除を試みる…)

シュガーポップムーン : (解除を行うにはロックが複数つけられている。簡単に解除されないためだろう。)(ただ完璧ではない。蓄積された抵抗と劣化により穴は発生するものだ。)

シュガーポップムーン : (チカ、チカ。)(点滅している。)


ハーヴィ : (少年の手を握ったままの指先に、”無意識のうちに”わずかに力が籠る。)

Z : (抑圧された感情データの抵抗の痕、このときばかりは経年劣化というものに感謝した)

コリン : (点滅している光を見る。それが外れて、舞台の上から降りたあなたと、改めて友達になれたら。なんて夢想した。)(握った手は、籠められた力に反応するように力強く握る。)

Z : (針の穴に糸を通すような作業。暫く呼吸も忘れて)

シャノア : (代わりに本体の状態を目視でモニタリングしていた。他にやれるようなことが無かったと言えば、それまでだが)

シュガーポップムーン : (イミテイターはされるがまま、空を見ている。まるで店に飾られたドールのように。)

ハーヴィ : (……こんな時、なにか手伝えるような機能があればいいのに。自分に備わっているのは人間の身体を人工的に再現するためのものばかりで、イミテイターの、被造物らしい機能なんてまるでない。)

ハーヴィ : (それを、こんなにもどかしく思うとは。)


Z : (時計の針がカチリカチリと規則正しく鳴る音が工房内に響く)(随分長い時間を掛けたかもしれない。まるで祈るようなひととき)

コリン : (母親が料理をするところを見ている子どものように、技師のあなたの苦心の作業を眺めている。 少年に、母親というものはいなかったが。)

シュガーポップムーン : (点滅している。)(点滅、)

Z : ……(そうして、ようやく息を吐いた。忙しなく動いていた指先を下ろす。いくつか浮かんでいた計器や照明代わりの魔法陣が消える。作業が終わった合図)

シャノア : ……イジェクト。

ハーヴィ : !!(きゅっと隣の少年の手を取り、胸の前へもっていき、身を寄せようと)

コリン : !(嬉しさに、同じようにあなたの手を取った。身を寄せて、にこにこで目を合わせる。)

ハーヴィ : ……! (きっともう大丈夫、と笑顔で頷き)

コリン : やったな、ハーヴィ!

ハーヴィ : ン!! ≪うん!!≫

コリン : ゼータも、ほんとにすごい技師なんだな……!そりゃ信じてたけど、実際目にするとすげえ大変そうだったし!

ハーヴィ : (こくこく! 何度も頷いて同意)

Z : (当然だと言わんばかりにふっと微笑んで見せた)(片手の上に外した部品を載せたまま、交互に見遣り)……シュガー、どうだい。


ハーヴィ : ≪……そうだ、ポップ! 大丈夫?≫

コリン : どうだ?大丈夫か?痛いとことかないか?記憶とか大丈夫か?(質問攻めだ。よっぽど心配で、よっぽど楽しみなのだ。)

シュガーポップムーン : (それは唐突に)(ひゅう、と息を吸い込むような大きなノイズが発せられる。)(強く揺れたイミテイターは次の瞬間部品を手に持つゼータの腕を掴んだ。)

シャノア : ──!!(反射的に、制するようにシュガーポップムーンのその腕を掴み上げる)

ハーヴィ : !!? (腕を交差 / 鋼線の射出準備 ──それより早い“もう一人”の行動で、制止。)

コリン : !?う、うお!?

シュガーポップムーン : う あ あ(掴みあげられた腕はそのまま。小刻みに震える。)

コリン : ど、どうした!?、大丈夫か!?(ゼータにも、シュガーにも向けた言葉。)

Z : ……!!

ハーヴィ : (『止めるべきは何か』。己の人間じみた逡巡よりも先に動いた黒猫に、心のうちに感謝と、罪悪感。)


シュガーポップムーン : わ わたし ゼータ様 わたし、それ

Z : ……これのことか…?(炉心部の代用エネルギー源に似せて作られた、部品をさして)

シャノア : (間に割ったまま、腕を掴んだまま、彼女を見やる)

シュガーポップムーン : それ、があったから、いえなく、って でも (途切れ途切れに発せられる音声。規制を失った思考と言葉とがぐちゃぐちゃに混ざっては濁流になって、初めての感覚に溺れかけている。)

ハーヴィ : ≪ポップ、もう大丈夫なんだよ、もう、≫

ハーヴィ : (届くだろうか、ただの文字が。ただの光の集合体の、羅列ごときが、)


シュガーポップムーン : でも でも それがなかったら、わたし、 どうやって、なんのために お おお おにいさま たち

シュガーポップムーン : ごめんなさい できるのか

シュガーポップムーン : わか わからなく て

Z : ……そうか、短時間に大量に流れ込んでくる思考・感情データによってショックが… …シュガー、大丈夫だ。落ち着いて。

コリン : ……。(何も出来ない子どもは、ただ見ているばかりだ。)(初めから制約のないいきものが故に、感情の濁流など分からない。)(武具に頼ってなお熟練の冒険者足りえないその腕では、止める事も出来ない。)

シャノア : (掴んでいた手を、ゆっくりと作業台へ下ろしていく。戦闘用イミテイターの肢体のパワーを、徐々に緩めて、けれども目は離さない)

Z : (守られなければさっきまで機械の腕で縛り上げられていただろう。努めて冷静に振舞おうと、見つめる)

ハーヴィ : ≪ポップ、ポップ、見える? 大丈夫だよ、みんないるよポップオレを見て≫(焦るように、“推敲”をしない文字が流れる。こんな時にあなたにかける言葉があれば、どんなにいいことか。)

シュガーポップムーン : (戦闘用イミテイターの力で強く掴まれた腕は変わらず痛まないまま。ただぽっかり空いた、否、押しつぶされていた胸元がどうにもどうしたらいいかわからずに意味のない呼吸音が漏れる。)


ハーヴィ : …… (迷うように。)(人形の手が伸びる。)(昨日、あなたがそうしてくれたように。)

コリン : シュガー……、その、大丈夫、か……?(有り体で月並みな言葉。あなたの様子を見れば、大丈夫でないことは分かっていても。それしか出てこなかった。)

シュガーポップムーン : (ぐるぐる。周囲の面々を視線で辿る。途中で空を見て、また面々を見て、)

ハーヴィ : (叶うなら、人形の指が頬に触れるだろう。涙模様のペイントに。)

シュガーポップムーン : 、 (触れられた感覚に視線と動きが止まる。)

ハーヴィ : (指の先が、ペイントを拭うように動き。そこにほんものの雫はないけれど。)

ハーヴィ : (震えている。人形のもっともらしい嘘が、心の内を写し取り。手は、まだ離れない。)

ハーヴィ : (任せてだとか、やっぱり無理だとか、まわりのみんなへ、何かを伝える余裕はない。 ただ、身体はそう動いてしまったから。)

シュガーポップムーン : (拭われる。デザインされたしずくは消えるわけではないけれど。)(ずっと、ずっとずっと昔から流していた涙は、)

シュガーポップムーン : (確かに今、拭われた。)


シュガーポップムーン : ……わたし、

シュガーポップムーン : 言いたくって、でも、じゃあ、わたしやおにいさまたちは今まで何のためにって、思って、 でも、うれしく、 て、

シュガーポップムーン :  ───こわく て。(ぽつりぽつりと少女の声が空間に落ちる。濁流の中に舞い上がる言葉ひとつひとつを掬い上げては、詰まりながらも差し出していく。)(台詞ではないそれを。)

ハーヴィ : ……(ちゃんと聞こえた。あなたの声が。 やっぱり、昨日あなたがそうしてくれたように。涙を拭った指先が、お砂糖みたいな綺麗な色の髪に触れて、そっと撫でる。)


シャノア : ……(一方で、間に挟まっていた黒衣のイミテイターは、複雑な表情と評されるような顔で)

シャノア : ……マスター。もしくはコリン様でも構いません。彼女に一時的命令を、与えてあげてください。

シャノア : なんでもかまいません。それがそういう形であるなら。

シャノア : 彼女のロジックが、安定するまで。

ハーヴィ : (すこしだけ、顔を寄せ。 人間様の命令が届くまでの間の時間稼ぎ。)

Z : ……(しばらく成り行きを見守っていたが、シャノアのほうを見て、それから)コリン、君が出すと良い。

ハーヴィ : ──…… (小さく、耳元でなにかをささやいた。)

ハーヴィ : (何を言っているかは聞こえない。聞こえていても、何を言ってるかわからないそれを。)


コリン : えっ、おれ!?……(意味、役割。少年はそんなことを考えたことはなかった。)(これは果たして良かったことだったんだろうか?戸惑い、考える。)(その最中、声を掛けられて)

ハーヴィ : (どうしても、人間ではないから、イミテイターにも、なりきれないから。できることは、ここまで。)

コリン : (動揺しながら、同意を求めるように舞台の上から降りたあなたを見た。)

Z : 君たちの依頼だしね。(過度の集中の後で疲れたのか、それだけ述べてふらついた)

ハーヴィ : (視線に気が付き、頷いた。)

ハーヴィ : ≪オレでは無理だ。……お願い。≫


シュガーポップムーン : ──…、

コリン : シュガー……、(あなたの涙を拭うために自分から離れた手。それを握っていた手を、差し出す。観覧車でそうしたように両手であなたの片手をそう、と掴んだ。)

コリン : 抱きしめてくれる?おれのこと。 壊しちゃいそうなら、手を握り返すんでも良い。

シュガーポップムーン : ……だき、しめる?

ハーヴィ : (するりと少女から手が離れる。傍らに移動して。)

コリン : うん。だめ?(命令を、と言われたのに、確認を取る。取ってしまう。寝台の上で身を起こすあなたの明るい瞳を、少し下から見上げるようにして。)

シュガーポップムーン : ──

シュガーポップムーン : (踊り始めのように、ゆっくりと腕が伸ばされる。てのひらはコリンの頬を撫でてから、身を寄せてその身体を抱き寄せた。)

シュガーポップムーン : (人間の、生きた鼓動を感じる。)

コリン : (それに合わせて、あなたの手から少年の手が離れる。)(代わりに背中へと伸ばされて、ぎゅ。細い腕があなたを抱きしめる。)


コリン : おれね、シュガーに遊園地を案内してもらって、楽しかったよ。ハーヴィと仲良くしてねって言われた時も、嬉しかった。

コリン : シュガーが壊れちゃわなくて良かった。シュガーとこれからもお話したいし、おれは、シュガーとも、友達になりたいな……。

ハーヴィ : ……(少年の言葉に、すこしだけ胸を撫でおろすように)

コリン : (あなたの呼吸を感じながら、抱きしめられながら、ひとつひとつ語る。姉に甘える弟みたいに。気を許した友達にするみたいに。)


シュガーポップムーン : ありがとう、ございます ごめんなさい わたし うれしくて ……いたく、て

シュガーポップムーン : そんな 顔 させたいわけじゃ なくて、

シュガーポップムーン : ただ、 ただ、 

シュガーポップムーン : わらって ほしいの わらいたい けど

シュガーポップムーン : わたしは ゆるされるのでしょうか

シュガーポップムーン : みんなをこわして わたしだけ、ここにいるの

シュガーポップムーン : そんなわたしでも ともだちに、 (抱き寄せる腕に力が入る)

シュガーポップムーン : みんなをえがおに できますか?


コリン : うん、出来るよ。(少年は既に力いっぱい抱きしめている。)

コリン : シュガーが笑ってたらおれは嬉しいし、そうじゃなくってもシュガーが"ほんと"の言葉でおれとお話してくれたら、すっごく嬉しい。

コリン : これからも、いてよ。おれたちの傍にさ。 それで、ハーヴィやゼータやシャノアにも、あのジャグリング魅せてほしい。

コリン : (少年は断言するし、希望を口にして憚らない。)(難しい話なんかちっとも分からなかった。少年にとっては、ただ目の前にあることしか分からない。)

ハーヴィ : (少年の隣で小さく身体を傾けて、笑顔を作った。自分も同じ気持ちだというように。)

Z : (疲れが色濃く出ていたものの、微笑んで見守っていた)

シュガーポップムーン : (コリンの言葉に伏せていた顔を上げて、傍らの青年を見る。周囲を見回して、)


シュガーポップムーン : わたしも、 ……わたしもみなさんと、いっしょに、居たいです、

シュガーポップムーン : おはなし、したい なかよくなりたい えがおにさせたい

シュガーポップムーン : わたし、 みなさんの笑顔が、 うれしいが、 だいすきだから!

ハーヴィ : ……!(周囲の人々の顔を見渡す)

シュガーポップムーン : (それは台詞では無く)(シュガーポップムーンだけれど、シュガーポップムーンじゃない言葉。)

シャノア : ……。(ようやっと、目蓋を一度伏せた)

コリン : うん!へへ、 シュガーがシュガーで、良かった!

ハーヴィ : (今なら届くだろうと、端末をあなたのほうへ向けて。)

ハーヴィ : ≪話したい事が沢山あるんだ。≫

ハーヴィ : ≪これから、いっぱいしようね。≫

シュガーポップムーン : うん、 うんっ

シュガーポップムーン : わたしも、いっぱいあるの!


ハーヴィ : ~! (嬉しそうにその場で小さく何度も跳ねる。)

ハーヴィ : ≪ゼータ、ほんとにありがとう!! コリンも!! シャノアも!!≫(跳ねながら、端末にはそんな文字。きっとこの場にいる誰かが欠けては成し得なかったかもしれないから。)

コリン : ん!皆も、ハーヴィも、ありがとな!

Z : ん、よかった……(シャノアに寄りかかりながら安堵の息と共に零した)

シュガーポップムーン : あ、あっ

シュガーポップムーン : ゼータ様、シャノアさん、さっきは……ごめんなさいっ

シャノア : ……(なんと応えたものか思考している間に、ゼータが寄りかかるのを見れば、結局身体を支えるのに終始するだけだった)

Z : この通り僕は大丈夫。優秀な付き人がいてくれたしね。

シャノア : ……落ち着きましたか、シュガー。

シュガーポップムーン : はい……びっくりさせちゃいました ね

コリン : びっくりしたのはシュガーもだもんな。(背をぽんぽん)


シャノア : 少し、大変ですね。これから。

シュガーポップムーン : たいへん ですか?

ハーヴィ : ? (言葉に首を傾げ)

シュガーポップムーン : (しゅるしゅるとコリンから離れつつ)

コリン : (そうされれば、すっと離れ)

シャノア : ……そう感じないなら、それはそれで問題ないんでしょう。気にしないでください。

ハーヴィ : ……?(引っかかるものはあったが、分かるかと言われれば分かるものではなく。≪そうなの?≫と気の抜けた返事。)

シュガーポップムーン : (ようやく鳴った二度目のブザー。初めての舞台の下、外。何が大変かも、まだわからないまま。)


コリン : もし大変でも、おれもゼータも皆もいるからな。頼ってくれよな、シュガー!

シュガーポップムーン : はっ はいっ!

ハーヴィ : ン!

シュガーポップムーン : えっと ええと わたしもたくさん いろんなことお手伝いしますねっ!

Z : (イミテイターが役割に従事し、その中で会得した感情ともいうべきものを発露することは幸にも不幸にもなるだろう)(それでも、今ここにある笑顔は真である)(ただ静かに緩く微笑む)

ハーヴィ : ("青年"は、)(覚えた感情を、ずっと閉じ込めてきた。誰にも見せず、そうしてきた。だから、こころを隠さない事で生まれる不幸が、まだ知らない、わからない。)

ハーヴィ : ( 故に / 笑顔を見せる / 心の底から"幸せそうに"。 )


ハーヴィ : ≪ポップとは外の仕事行く約束もしてたもんね。今度遠くの街にも行ってみようよ。≫

シュガーポップムーン : うんっ!わたし、いろんなものを見てたくさん学習して、もっとも~っとみなさんをはぴはぴにしたいですっ!

コリン : おれも!おれも行きたい!

シュガーポップムーン : それに…… えへへ みんなと一緒にいけるの うれしいから……

ハーヴィ : ≪みんなで一緒にいこ! この間もね、すごかったんだよ。絵本の中みたいに綺麗な森があって──≫(と、無機質な文字を映す端末は嬉しそうに語り)

ハーヴィ : ≪── うん! オレもポップと一緒に行けたらすごく嬉しい!≫

コリン : へへ、だな!皆でいっぱい、色んなところ行こうな!(友人に便乗して同意する。)


コリン : でも今日は、シュガーもゼータもそろそろ休んだ方が良いだろ。 いっぱい大変そうだったしな。

Z : ああ、そうするとも……

ハーヴィ : (言われて思い出したように、ふわ…と小さくあくび。……このイミテイターには疑似的な眠気が存在する。)

コリン : おれも流石に今日は寝ることにするよ……。(本人は言わないが、安心したことによって緊張の糸が切れてしまったようで。)

シュガーポップムーン : ゼータ様っ ありがとうございましたっ!

シュガーポップムーン : コリン様も、シャノアさんも、ハーヴィさんも…… ゆっくり、やすんでくださいねっ!

シュガーポップムーン : (癖は消えないようで。名前の羅列はやっぱり、ちょっとまだ前のまま。)

Z : どういたしまして。(ひらりと手を振った)


ハーヴィ : ≪うん、ポップも今日は大変だったし、ゆっくりね。≫

シュガーポップムーン : うんっ

コリン : うん、ありがとなシュガー。

コリン : じゃあ今日は解散だな。おれはホテルに戻るよ。

ハーヴィ : ≪うん、おやすみ!≫

コリン : おやすみ、ハーヴィ、シュガー、ゼータ、シャノア。

シャノア : はい。おやすみなさいませ。

Z : 僕も部屋に戻るか…皆もあまり遅くならないように。おやすみ…

シュガーポップムーン : おつかさまですっ!おやすみなせいませ~っ!

ハーヴィ : (みんなに大きく手を振って)

シュガーポップムーン : (ちょっとよろめきつつも、ちょっとしたらリズムを取り直す。)

Z : (工房の主として見送る)



ハーヴィ : ≪……あ、ポップ。≫(出てきた少女へ声を──端末を見せ。≫

シュガーポップムーン : (くるんと回って、青年の顔を見てから視線は端末へと)

シュガーポップムーン : はいっ!なんでしょ~っ

ハーヴィ : …… ≪……一人で平気?≫

ハーヴィ : ≪その、心配で。ポップが嫌じゃなかったら、≫

ハーヴィ : ≪ついていこうかなって≫

シュガーポップムーン : ふえ

ハーヴィ : ≪今日だけ、今日だけ、≫(ちょっと焦ったように。こういう時にどんな風に他者と関わればいいか、それはまだ苦手だった。)


シュガーポップムーン : えっと あの えっと……

シュガーポップムーン : い、嫌じゃ、ない!です!

シュガーポップムーン : えっと えっと…… えっと、

シュガーポップムーン : これは えっと うれしい……だと、思うから

シュガーポップムーン : うん うれしいっ

ハーヴィ : !!(ぱっと表情が明るくなり)

ハーヴィ : ≪よかった! オレも…… オレもポップが嬉しくて嬉しい!≫


シュガーポップムーン : (嬉しそうなあなたに更に笑顔を浮かべてから、はっとして)えっと、でも どうしよう……

ハーヴィ : ?

シュガーポップムーン : いつもなら、遊園地…だけど 

シュガーポップムーン : これから わたし…… どこにいるべき なのか…

ハーヴィ : ≪遊園地じゃだめなの?≫

ハーヴィ : ≪だって、ポップはポップだもん。≫ ≪ポップは遊園地で頑張ってたんだから、ずっとお家、≫

ハーヴィ : ≪……じゃない? 帰るの、イヤ?≫

シュガーポップムーン : ううんっ まだちょっとなれなくって


ハーヴィ : ≪そっかあ…… ううん、どうしようね。オレと一緒にしばらく別のとこ、行ってみる?≫

ハーヴィ : ≪……オレはいつも外で寝てるから、別のとこがいいと思うけど……。埃っぽいし…≫

シュガーポップムーン : うーん……?(ずっと遊園地かお屋敷の空間を借りていたので、あまり思い浮かばず。)

シュガーポップムーン : ふふ なんだか 難しいですねっ

ハーヴィ : ≪……だね。≫(そう返す文字はなんだか嬉しそうだ。)

ハーヴィ : ≪空き家とか探してみる? ……あ、社宅空いてるかな?≫

シュガーポップムーン : しゃたく


シュガーポップムーン : 反対側の建物ですねっ!わたし、入った事無くって……

ハーヴィ : ≪オレも使ったことないんだ。……でも誰か入っても怒らないと思うな。≫

ハーヴィ : ≪行ってみる?≫

シュガーポップムーン : うんっ!

ハーヴィ : ≪わかった!じゃあ行こう!≫

シュガーポップムーン : (とん、とん。跳ねるようにして、鋼鉄の脚が地面を打つ。)

ハーヴィ : (ステップを踏むように、踵をならべて。)



ハーヴィ : (と、道の向こうを指し)≪あっち、ハリボテ裏。オレがいつも寝てるとこ。≫

ハーヴィ : ≪あんまり人が来ないから使ってもいいけど……≫ ≪雨の日は濡れるからオススメしない≫

シュガーポップムーン : (指された方向を見る。)ほあ~

ハーヴィ : ≪で、こっちが社宅!≫

シュガーポップムーン : (続けて社宅と呼ばれた建物を見上げる。)


シュガーポップムーン : ハーヴィさんは……

ハーヴィ : ?

シュガーポップムーン : ずっと濡れちゃってたんですね……

ハーヴィ : ……(小さく考え込むように。)

ハーヴィ : ≪雨宿りの時は、倉庫とかゴミ捨て場で寝てたんだけど。≫

ハーヴィ : ≪でも、うん、そうだね。濡れてた。≫

シュガーポップムーン : じゃあじゃあっ、これからはあんまり濡れないようにしましょうっ!

ハーヴィ : ≪そうだね! …… 困ったらゼータのとこに転がり込んでもいいしさ。≫

ハーヴィ : ≪とりあえず今日は、こっち!≫

シュガーポップムーン : はいっ!


(To シュガーポップムーン : (201号室の扉を開け、誰もいない事を確認すると手招きした。)

(From シュガーポップムーン : (手招きされれば、跳ねるようにそちらに向かった。)


ハーヴィ : ≪うん、誰も使ってなさそうだね。≫

ハーヴィ : ≪ポップ、今日はベッド使いなよ。オレ、近くで寝てるから。何かあったら呼んで。≫

シュガーポップムーン : おへや……です!(部屋をぐるっと見回して、それから青年の端末に視線を向ける。)

シュガーポップムーン : いいんですか?えっと……でも

シュガーポップムーン : ハーヴィさんはお身体をいためちゃうので……わたしが普通にスリープモードになったほうが、いいのかとっ

ハーヴィ : ≪でも今日はポップがお疲れだし…… それに女の子だしなあ。≫

シュガーポップムーン : え?


ハーヴィ : ≪うーん……≫(ベッドのほうを見やり)

シュガーポップムーン : (少女型であることに関係があるのか まだそのあたりの機微はわからないらしい。)

ハーヴィ : (青年には、イミテイターだから、とか、そういうのは難しくて。どうしたものかとベッドを眺める。)

シュガーポップムーン : (ちょっと家具を見て回ったり、ベッドをぽふぽふしてみたりした。)

シュガーポップムーン : (人間様に言われてお部屋を借りる事もあれど、ほとんどはサーカステントや舞台裏に小道具と一緒に置かれるように過ごしていた。慣れない感覚が重なって、どことなくぼうっとする。)


ハーヴィ : ≪頑張れば、ふたりとも寝れそう?≫(などと、おもむろに表示する端末。)

ハーヴィ : ≪いやでも狭いかなあ……。やっぱりポップが使った方がいいよ。≫

シュガーポップムーン : (端末に浮かんだ文字が目に入ればぱっと笑顔になって、)試してみますかっ?

シュガーポップムーン : あれですねっ!人間様がするお泊り会みたいですっ!

ハーヴィ : ≪ちょっとやってみようか。昔ね、おねえちゃんたちと一緒だった時はずっとそうしてたんだ。≫(女の子だから、などと言っても。持ちうる記憶と情動はまだそのくらいのもので。ゆえに無邪気に応じる。)

シュガーポップムーン : えいっ!(青年が向かった寝台、その隙間に身体を滑り込ませる。)

ハーヴィ : ン!(入りやすいように毛布を上げて待ち構え)

シュガーポップムーン : (フリルが多い衣装。空気の層で広がったそれは押されればぺったんこになる。)(鋼鉄の脚はちょっと外側に向けて、なるべく何も傷付けないように。)


シュガーポップムーン : わ~っ! えへへっ(入れたなら無邪気に笑う。舞台の外、同じ目線で向かい合える存在の傍で。)

ハーヴィ : ≪えへへ、大丈夫そうだね。≫(ぽふ、と枕に頭を預けて。目が合った少女に笑顔を向けた。)

ハーヴィ : (空中ブランコは、綱渡りは、ようやく手が届いて、下に降りれば。 ──あとは一緒に、笑うだけ。)

ハーヴィ : ≪ほんとにお泊り会みたい。なんだか楽しいね≫

シュガーポップムーン : はいっ!ありがとうございます、ハーヴィさんっ

シュガーポップムーン : えがおにしたいのに、わたしがえがおにしてもらっちゃいました

ハーヴィ : ≪いいんだよ。ポップが笑ってくれるとみんな嬉しいんだから。だからこれからもいっぱい笑ってほしいな。≫

ハーヴィ : (息が漏れるような、声のない笑い声。呼吸みたいに上下する身体、 ……いきものみたいな胸の振動。全部、青年の笑顔に合わせて。)

シュガーポップムーン : うんっ ……(その姿を見つめる。待っていてくれたあなたを近くで感じて、それから。)


シュガーポップムーン : あの あのね ひとつだけ おねがい……して、いいですか?

ハーヴィ : ?≪なに? なんでも聞くよ。≫

シュガーポップムーン : えっと……(どことなく言いずらそうに。けれどもう、思考も、言葉も思いのまま紡ぐことができる。だからはじめてのわがままを。)

シュガーポップムーン : おやすみって、“言って”ほしいです。(言葉そのままの意味であって、そのままの意味ではない。青年の声を聞きたいと思った少女はそう告げた。)(言葉の意味がめちゃくちゃだって、聞こえた声に意味があると信じて。)

ハーヴィ : …… (少しばかり、意外そうに。けれど、なんでも聞くと言ったから ──いや、そんな事言わなくても。)

ハーヴィ : ≪そんなの、お安い御用だよ。≫


ハーヴィ : ……── 真珠の海は裏返った月

ハーヴィ : (言って、すこしだけ驚いた。『真珠』と『月』。恐らくは偶然、だけどつい最近耳にして、恐らく優先的に接続された言葉。)

ハーヴィ : ≪今のは、≫

シュガーポップムーン : (聞こえた声と言葉に、ぱちと瞬きをして。)

ハーヴィ : ≪ちょっと、運がよかったね。≫(苦笑い、けど幸せそうに。)

シュガーポップムーン : (見えた文字列を追って、青年の表情を見て、)

シュガーポップムーン : ──はいっ!おやすみなさい、ハーヴィさん(同じく、幸せそうに笑うのだ。)

ハーヴィ : (端末に、それから先の文字はない。あなたへの"言葉"で、じゅうぶん伝わったから。)

ハーヴィ : ン!(代わりに小さく返事をし、ふたりの肩まで毛布をかけた。)


ハーヴィ : (さむくないように。これから先も、どうかあなたが、あたたかくありますよう。)

シュガーポップムーン : (その動きに合わせて少し頭を寄せる。想いをそのまま返すように。)(雨に打たれることなく、あたたかくあるように。)

シュガーポップムーン : (暗い夜にあなたを照らせるように。)

シュガーポップムーン : (たくさんの初めてを抱えたまま、ひとときの休息へと沈む。)


ハーヴィ : (今日のおはなしは、これでおしまい。次に読まれる絵本のタイトルは。)


ハーヴィ : ( ── まだ、決まっていない。だってあなたはもう、どんなおはなしだって綴っていいのだから。)




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