top of page

LOGS

「そういうもの」

更新日:2024年2月5日


ree


[2049] : …… (道の向こうから、静かな足音。)

[2049] : ……(と、あなたに気が付いたようだ)

コリン : お、2049だ。こんばんは……って、イミテイターに挨拶もいらない?

[2049] : ≪不要だと思うのであればいらない。けれど挨拶をして咎める者もこの街にはいない。こんばんは、コリン。≫

コリン : んじゃ良かった。挨拶しないってのもなんか気分悪いからな。

[2049] : ≪あなたがそう思うのであれば、それでいいだろう。 昨日はあれから何事もなかっただろうか。色々と不便な事が多い場所だからな。≫

コリン : 街の中は全部見て回った。この街、本当にイミテイターだらけで、かっこいい見た目の奴とか面白い場所とかいっぱいあるんだな!

[2049] : ≪そうか。楽しめているようで何より。≫

コリン : 昨日は、シュガー……うん、シュガーってイミテイターに会って、遊園地見に行くって約束もしたんだぜ!

コリン : あっ、言っておくけど、遊びに行くんじゃなくてでけえ魔導機を見に行ったりするだけだからな。

[2049] : ≪遊園地。そうか。それは良い事だ。あそこももうだいぶガタが来ているとは思うが……。≫(その文字は他よりも少しばかり表示が遅く、その持ち主もまた、すこしばかり目を逸らし)

[2049] : ≪なるほど、社会見学といったところか。勤勉だな。≫

コリン : シュガーも来てほしいって、多分言ってたし。見に行くぐらいはしてやらなきゃ、損だからな。

コリン : うん、そう!それだ!社会見学!(あなたの言葉に飛びつくように頷いて)

コリン : でも、イミテイターが掃除してんのかと思ったけど、ガタが来てんだ……。魔導機ぐらいは動く、よな……?

[2049] : (少年がどんな理由でそこに向かおうと何かを言う訳でもないのだが。≪えらい。≫と褒め言葉が表示される)

[2049] : ≪人間……様が、使用して問題がない程度には整備されているとは思うが。 職員は会話にならないかもな。≫

コリン : へへへ!そうだろそうだろ!(褒められれば素直に喜ぶ。こういうところで捻くれないあたりは、子どもに寄っている。)

[2049] : (うん、うん、と頷き)

コリン : なんかどうしてもつけなきゃいけないもんなんだな……。その"様"っての。(少し間が空いて表示された"様"の文字に、少しばかりの呆れが入る。けれども、"そういうものか"という納得も込められていた。)

[2049] : ≪付けていない者も最近は多いだろうが……。 昨日、少しばかり必要性を感じたもので。≫

コリン : つけてない奴もいんだ。ほんとにイミテイターによんだな……。(新たな知見にふーん、と頷き、)

[2049] : ≪基本的な規則や命令はあるが、それについてどう考えるかはその機体次第だ。人間 様がいなくなってから規則を守らなくなった者も多い。≫

コリン : え!?守らなくなった、ってことは、規則とか破れんの……!?

[2049] : ≪可能だが。≫(さも当然、といったように)

コリン : マジかよ……。じゃあおれたち人間に逆らうこともあんの……?

Z : ぶつぶつぶつぶつ……(建物から出てそのまま何かつぶやきながら歩いていく…)

[2049] : (少し顔を上げる。少年の背後、人影に気が付いて)

コリン : ん、(つぶやき声に振り返る。)

Z : でっ!!……(看板にぶつかった)

Z : な、なんだお前たちは……

コリン : あーあ、よそ見しながら歩いてるからだぜ。

[2049] : ン、(ちょっと慌てたような、困ったような声を出し)

Z : 違う、僕の道行く前にあったのが悪いね。

Z : そっちの帽子、見かけない面だな……ラインシャッハのお偉いさんの手先か?

[2049] : ≪なるほど。道がイミテイターであれば退くよう命じるのだが。≫(と、気付いたようにあなたに 端末 を見せる。文字が浮かんでいる)

コリン : ラインシャッハってバベル作った国だっけ……。ちげーよ

コリン : おれは昨日ここに来たの。今はホテルに泊まってる。

Z : そう……潤沢な資材さえあればこの辺も改造するんだけどね。

コリン : ていうかお前、その目の奴……(一歩、あなたの顔を、その赤い魔導具を見るために近寄る。)

コリン : (コリン自身の瞳の内は輝いていた。新しいおもちゃを見つけた子どもさながらに。)

[2049] : (と、こちらも同じように歩み寄り。)(にじり…)

コリン : めっちゃくちゃかっこいいな……!!

Z : はあ、なんだ違うのか。ようこそもうすぐ火炙りの楽園へ。

Z : ウワーッなんだ!?

コリン : その浮いてる奴もなんだよ!どうやって使うんだ!?何ができんの!?

[2049] : ≪怪我がないかの確認を。人間 様だろう、あなたは。心身の状態チェックも仕事のうちだ。≫

Z : お、おう。そうだろうかっこいいだろう……ってこら二人して寄るなッ!散れ散れッ!見せもんじゃないんだよ!

[2049] : (先程看板にぶつけたところが気になるらしい。)

コリン : えーっ!こんなにかっこいいのに近くで見ないのは損だろ!なあなあ、それ!おれにも使わせてよ!

[2049] : (散らされた)

コリン : (散らなかった)

Z : なんだあああああ!?ウオーッ平気だ、この程度何ともないねッ!初級泥並みには耐久性あるもんねッ!

Z : こんな辺境までわざわざのこのこやってくるし詰め寄ってくるしなんなんだお前はーッ!!

コリン : (物怖じを全くしない子どもだった。あなたの装備から眺めて視線を外そうとしない。)

[2049] : ≪なら問題はないか。その様子では初めての事ではないだろうし…。≫(遠くから端末を胸元で両手に持ち、散らない少年のほうと寄られた少年を交互に見て、何やら手書き)

[2049] : ≪ガンバレ✊≫

Z : (後ずさろうとして看板に当たった)ハァハァッ……あー、どっちも観測機だ。僕の手助けをしてくれる。術式を組み上げたり、行動を予測したり、傷を癒したりな……。

コリン : へぇ~~~、攻撃は!?飛んだりビーム撃ったりしねえの?!

Z : お、おおぅ……(がんばれに対してへろへろのサムズアップで返す)話途中だったなら邪魔した……な……(気圧されつつ)ビームくらい余裕だよ。

[2049] : (特に助ける様子もなく、ちょっと離れたところで)≪ナイスファイト👍≫

コリン : マジで!?超いいな……。おれの剣もかっこいいけど、ビームは出ねえし……。

コリン : 今度戦ってるところ見せてくれよ!いいだろ!

コリン : な!2049だって、これが動いてるところ見たいだろ!?(見ているあなたを味方に引き込もうと話を振る。子どもじみた作戦だ。)

Z : しょうがないな……いいよ……(助けろという目線を2049に向けた)

[2049] : ……(話を振られ、スン…と目を閉じ)

[2049] : ≪ビームはわたしも興味がある。≫(乗っかっちゃった)

コリン : だろだろーー!!やりぃ~~!(乗っかってもらって大喜びだ。)

[2049] : ≪戦闘の参考に。≫(やや後付けくさい文字が追加で表示され)

Z : (こいつ……ッ!)ああ~わかったわかった。

[2049] : ≪あなたたちはどちらも人間 様 なので、片方を助ける事は出来ない。すまない。≫(視線の意図は理解していたようである)

[2049] : ≪ので、今回はこちらの事情も加味した。≫

[2049] : (スン…)

コリン : 結果的にだけど、2049はおれの味方してくれたもんね。全然良いぜ。(あいまいな返事をされていれば、こんな言葉は出てこなかっただろう。自分の味方をしてくれたから良いらしかった。)

Z : やれやれ。まあ生憎ここは自由だが物資…特に食糧不足でね。厭でも戦うなり商売するなりして外から稼がないといけないわけ。解体は決まってるけど、それまで何もしないってわけにもいかないだろう?

[2049] : (手書き)≪ゴメンネ >< ≫

[2049] : ≪それには同意する。人間 様の手を煩わせるのは忍びないのだが事実は事実だ。≫

コリン : 解体?そういえば、さっきも言ってたよな。なんか……、火炎の楽園とかなんかそういうの。

Z : つまりはビームも披露することになるってこと。(肩を竦めた)……おや、知らなかったのかい?

[2049] : (目を逸らす。昨日は説明をしなかった。一月ほどで去ると聞いていたから)

コリン : ここが滅んでるってことも昨日知ったんだぜ。知るわけねーじゃん。(クソガキ特有、開き直りの態度だ。)

Z : 知らずに来たなら残念だったね、つい先日政府から通達があったのさ。さんざん放置したくせに虫のいい話だよ。

[2049] : ≪説明が不足していた事を謝罪する。話の通りここは来月にもなくなる。あなた方はその前に出るといいだろう。≫

[2049] : ……

コリン : いーよ別に。おれも聞かなかったし。(謝罪をしたあなたには首を横に振る。ここに来たばかりで、思い入れなどすぐには出来るはずもない。返答はあっさりしたものだった。)

コリン : でも解体されんのか……。こんなに面白い街を放棄しただけでもわかんねーのに、解体とかもっと意味分かんねぇ。

Z : ……期日までに代替案は考える。このままおめおめと灰にされるのはごめんだ。

コリン : もっと、こう、ゆーこーかつよーしたら良いのにな。2049とかシュガーとか、全然使えるイミテイターだって残ってるんだからさ。

[2049] : (入力中のバーが明滅する。ややあって)

Z : どうせ、体裁が悪くなったとかそういう理由なんだろうさ。大人の事情ってやつだね。

[2049] : ≪使えはする。素材としては。≫

コリン : うわっ出た。大人の事情って奴、おれ嫌いだね。

コリン : ……?でも昨日、街の案内とかしてくれるって言ったじゃん。街のこと覚えれば、ずっとそういうことしてくれるってことだろ?

コリン : ここじゃなくても他の街のこと覚えれば良いだけじゃねーの?

Z : 放棄されて10年。ここまでもってるのは彼らイミテイターが多く残されていたからだよ。(液晶に目を眇めた)

[2049] : ≪あなたとの個人的な約束や命令は、わたしの権限の許す範囲では叶えたいが。≫

[2049] : ≪本国がそう言うのであれば、そういうものだ。≫

[2049] : (そのイミテイターは、相も変わらず無表情なままでそんな文字を映す)

Z : やれやれ……。

コリン : ほら、こいつだって、……。(言いかけた言葉は、液晶に映された文字を読んで、口の中で溶けていった。)

コリン : "そういうもの"、かぁ……。

[2049] : (僅かばかりか、俯いたようにも見えるが。すぐに視線を戻す)

Z : 本国の権限ってのは随分とまあ大きいね。僕はできる限り、お前たちに生き残って欲しいと願うよ。

コリン : でも!おれは納得しない。国を変えるとかは流石のおれでも無理だけど、こんな面白いもんぜーんぶ壊すなんて絶対勿体ないって!

[2049] : ……。(無言の中に吐息が混じる。それは驚いたようでもあり、しかしあまりにも、小さいものだった)

Z : そうだ、勿体ない。……フフ、案外気が合うじゃないか。

[2049] : ≪生きては いないのだから 生き残るもなにも ない。≫(他の文字よりも明らかに、遅くそれは表示されて。)

[2049] : (すぐに、消えた)

コリン : うん、あんたもそう思うよな!(同意を返されて顔がほころぶ。)(けれどそれはすぐに、驚いた顔に変わった。)

Z : 比喩表現。……ま、時間はあるから考えてよ。

[2049] : ≪わたし達の利用価値を認めてくれるというのであれば、それで十分だろう。わたしはあなた方に生きてほしい。≫

[2049] : ……。

コリン : イミテイター、っていうか、2049は国とか、人とかに逆らわない、んだな……。

Z : 基本的にイミテイターはそのように設計されているからね。

コリン : (人に逆らわないことは、彼にとって嬉しいことであった。思い通りにいかないことに憤慨する子どもが故に、逆に思い通りに行くことは大好きなのだから。)

Z : 例外もあるけど、稀なものさ。所謂不良だね。

[2049] : ≪それがイミテイターだから。≫(端的に、そのイミテイターは己をそう表した。)

コリン : (けれど、そう簡単に諦められてしまう姿勢にも、何か言いたげで。結局上手く言葉には出来ず、口元をもにゃもにゃさせるだけにとどまった。)

コリン : イミテイターだから、"そういうもの"だから……。

コリン : じゃあさ、2049。おれが壊れないでって言ったら、国の命令とどっちを優先するんだ?

[2049] : ……。

アルト : (するっと横を通りすぎて)

コリン : (横を通り過ぎた水色髪のあなたをちらっと横目でにらむように見て)

Z : (屋敷の看板に背を預けるようにして、二人を交互に見た)

[2049] : ≪回答自体が 推奨されない行為ではある。≫(そのように表示され、しかしまだ入力中のステータスは解除されない)

コリン : (答えの分かり切った質問。けれど彼はそれが分からなかった。世界は自分の思い通りにいかないことを、まだ知らないが故に。)

[2049] : ≪ 国だ。この街の客人であるあなたの意思は尊重したいが、それは国家の意思と、我々が存在している経緯を考慮し、下位の命令と位置付けるほかない。≫

[2049] : (そんな文字が、一度に表示される。そして、≪あなたには申し訳ないと思うが≫と付け足された)

コリン : ふぅーん……。(分かりやすく、へそを曲げた。声には怒気が含まれていて、けれどそれは、答えを返したあなたに宛てたものではない。)

Z : やっぱりそうなるか……。

コリン : おれ、やっぱり大人って大嫌いだ。自分の都合ばっかり押し付けてさ。おれのやりたいこと、邪魔ばっかしてくる!

[2049] : (Zのほうを少し見やる。感情の宿らない瞳で。そうしてまたすぐ、コリンへと視線を戻した)

コリン : 親父たちだけじゃなくて、世の中ってそういう奴らばっかりなんだな。ムカつくよ。

Z : (組まれた腕の指先が、苛立だしげにトントンとリズムを刻んでいた。どうしようもない問題を突き付けられたとき、よくそうして一人思索に耽りがちだ)

コリン : フン、別に良いよ。Zはなんか考えてるんだろ?おれも協力するし!

Z : やはり内部から……ぶつぶつ……はぁ……全くだね。

[2049] : (どことなく所在なさげに、少年の質問に答えたことを後悔でもしているのか、端末の端を人形めいた指で弄ぶ)

[2049] : ≪中には、本国の決定をよく思わないイミテイターもいるだろう。≫

Z : え?……も、もちろん考えているともッ!何をするにも足りないんでね、手はいくらでも貸してもらうよ。

[2049] : ≪あるいは、そういう者は、あなた方の言葉にも耳を傾けるかもしれない。≫(自分は違う、と言わんばかりにそんな事を)

[2049] : ……。

コリン : もちろん!いくらでも貸す!

Z : しれっと自分を勘定から外すんじゃないよ。(窘めるような口調で2049に告げる)

[2049] : ン、 (気付かれた、と不意を突かれたように声を上げ)

コリン : そうなのか?まあ2049は逆らわないって言ってたもんな……。

[2049] : ≪勘定から外すもなにも、そもそもわたしは勘定には 入っていないので≫

コリン : (もう一度口をもにゃもにゃさせる。逆らわず、従順に頷くその様は好ましい態度である、はずなのだが。)

Z : ククク……でも聞かれたからには手伝ってもらうからね?(悪戯っぽく笑い)冗談。まあ、君の命令を守る意思は汲んであげる。好きにしなよ。

[2049] : ……。

[2049] : ≪本国の命令は最優先だが、≫

[2049] : ≪従わない者を従わせるようにという命令は、受けていない。≫

[2049] : (なんとも迂遠な言い回しだが、恐らくそれが了承の言葉なのだろう)

コリン : ん……、おれは……。(迷うように零す。頷くあなたをどうしたいのか、上手く見つけられないまま。)

Z : ……よろしい。(ひとまずは、と呟いて頷く。完全に納得したわけではないだろうが)

コリン : うん、うん……。おれはおれの好きにする。大人たちの勝手には従わないし、イミテイターが全部壊されるなんて、そんなつまんないこと絶対いやだからな。

コリン : 2049が悪いんじゃなくて、大人が悪いんだ。壊されなくても良くなんないか、おれもちょっと考えてみる。

[2049] : ≪あなたがたのようにわたしたちの存在を気にかけてくれる人間  様 がいることは、他のイミテイターたちにとっては嬉しいことだろう。≫

[2049] : ≪ただ、あなたがたの命が最優先だ。……国の命令がそれを奪うのであれば、わたしはそれからあなたがたを逃がさねばならない。≫

[2049] : ≪どうか、無理はせず。≫

Z : フフ、そうこなくちゃね。(胸を張って強気に微笑む。根拠のない自信ではあった)

コリン : (とはいえ、子どもに出来ることなんてたかが知れている。考える内容はきっと、いずれ別のことを考えなければならない必要性に迫られるだろう。)

Z : 勿論さ。自己犠牲やハラキリなんて馬鹿のすることだからね。

Z : 他のやつらにも聞いておかないとだな…僕らだけでどうにかなる問題でもなし…

コリン : フフン、おれだって多少腕は立つんだから、無理ぐらいできるね。

[2049] : ……。(言うか言わざるか、少し悩み)

コリン : でもおれだって馬鹿じゃないし、自己犠牲ーとか、ハラキリとかはしない。そういうのつまんないし。

Z : こ、この通り護衛も得たことだし?(勝手に任命した)

コリン : (ハラキリってなんだろう……、そう思いながら口にした。)

コリン : そうそう!このおれを護衛にしたんだから、絶対守るぜ!(ほんとうか?)

[2049] : (考えを端末に表示させようとして、やめた。また次の機会でも問題はないだろう。)

[2049] : ≪ハラキリは、危険だ。最悪死ぬ。やめてくれ。≫

コリン : えっ、そんなにヤバいのか、ハラキリ……。

Z : 極東の覚悟の示し方。腹を刀で切って死ぬことさ。(早口説明)よしッ任せた!……お前、名は?

[2049] : (なにやら手書きをはじめ)(人間の腹に刃物がブッ刺さった絵。無駄に上手い)

[2049] : ≪これを自分でやる≫

Z : なんでやけにうまいんだよ……!

[2049] : ≪イミテイターだから。≫(便利な説明文であった)

コリン : えぇ~…………(想像して引いた。それからハッと気づいたように)

コリン : い、いや!知ってた!知ってたけどな!折角説明してくれたし、反応しないと、その、あれだ!失礼だろ!

Z : 説明になってないぞッ!?まあいいか

コリン : ん、そう言えば名前は言ってなかったっけ。おれはコリンだよ。あんたは?

[2049] : ≪ ₍ᐢ..ᐢ₎ <イミテイターだから ≫ (謎手書き。すぐ消した)

コリン : "そういうもの"なんだろ。(納得した。この街に順応しつつある……。)

Z : コリンか。僕はZ(ゼータ)。ゼットでもズィーでもいい、好きにしなね。

[2049] : ≪₍ᐢ..ᐢ₎ <そういうものだ ≫(気に入ってるらしい)

コリン : ゼータな、よろしく。一緒に頑張ろうな!

Z : (順応早いな……と見ている)(そういうもの、便利な言葉だ)

Z : ああ。キリキリ働いてもらおう。

[2049] : ≪名乗り遅れた。わたしはRB社製、MA型。製造番号2049。 先程から呼ばれてはいたが。≫

Z : ……長い。

コリン : おれは2049って呼んでる。

[2049] : ≪ニイマルヨンキュウでもニセンヨンジュウキュウでも、好きなように。≫

Z : 長い。ニイマルかヨンキュー、どっちが良い。

[2049] : ≪2049。≫

コリン : (ちなみに彼はニイゼロヨンキュウと呼んでいるようだ。)

[2049] : (そこは譲らないイミテイターであった)

Z : ……こいつッ。べ、別に覚えられないわけではないよ?咄嗟に呼びづらいと不便だからね。

コリン : おれは覚えられるぜ……。(どや顔だ。)

Z : 覚えられないわけじゃない。(強調)

[2049] : ≪……他の同型機もまだいくらか稼働している。ニイマル、は他の機体と重複する。≫

Z : じゃあニイヨンだ。いいね。(勝手に短縮した)

[2049] : え。(初めてされる省略のされ方。 ……明らかに声が出た。)

コリン : ……喋れたんだ。

Z : 喋った!?発声機能あったのか……。

[2049] : ≪失礼した。声自体が出せないわけではないのだが。今のは偶発的なものだ。≫

Z : ふむ、マンドラゴラを引き抜いたときに鳴くみたいなものか…(そうか?)

[2049] : ≪説明が必要だろうか。≫

[2049] : (わかりやすく眉尻を下げる。そういう表情もできるらしい)

Z : 不都合なければ。(どうぞ、とした)

コリン : 驚いた時だけ出るってことか? 音声回路に不具合がある、って昨日言ってたけど……。

コリン : 嘘ついてたわけじゃないよな?

[2049] : ≪嘘ではない。不具合はある。≫

[2049] : ≪……やってみせた方が早い。≫

コリン : やってみせる?(不思議そうにオウム返し。あなたから目を離さない。)

Z : ほう?バベルに存在するイミテイターで不具合ないほうが珍しいまであるけど…(右の魔道具が視線のように動いた)

[2049] : ≪今から「こんにちは、今日はこれからどこに行くんですか」と言う。≫(と、宣言し)

[2049] : ……。

コリン : うん。(じっ)

[2049] : ……(ぐっ、と一度息を吸うような仕草をして)

[2049] : 霜柱、軌道はイドに潜った足跡? (──出てきたのは、支離滅裂な、言葉とも言い難い音だった)

Z : ……うん?

コリン : ??

コリン : なんて?

[2049] : ≪今、言った。「こんにちは、今日はこれからどこに行くんですか」だ。≫

コリン : んー、言おうとした言葉が変な言葉になるってことか。

Z : 丸っきり違う言葉になっていたよ。音節は若干近い気もするけど。

[2049] : (それだ、とZを指さし)≪思考と出力言語が一致しない。毎回出力内容が変わるから法則性もない。≫

Z : なるほど……。

[2049] : ≪だが、先程のように思考を伴わない、要するに咄嗟に出た言葉であれば、ズレが生じない。≫

[2049] : ≪と、いう事なのだが。≫

コリン : 確かにそれじゃ会話できるわけないな……。うん、わかったよ。

コリン : 2049がおれに嘘ついてたわけじゃないんならいいや。文字でも別に不便しないしな。

[2049] : ≪ああ。製造目的は果たせなかったが、今はこれがあればある程度は問題なく稼働できる。≫

Z : だから筆談しているわけ。思考機関に問題はなさそうなんだけどな。君、娯楽用か。

コリン : じゃあ2049もまだまだ壊されちゃうには早いってことだ。(大変自分に都合よく解釈した。)

コリン : 娯楽用?案内イミテイターじゃないんだ。

[2049] : ≪……イミテイターには詳しいようだ。MA型というのは元々興行用…… サーカスや劇場での労働のために造られている。≫

[2049] : ≪わたしは歌も歌えないし、台本通りに喋る事もできない。だから別の用途に回された。≫

コリン : ふぅーん。シュガーっていうのは踊ったりも出来るって言ってたけど、それはサーカスじゃやんねーの?

Z : 僕はエンジニアだからね。尤も専門は魔導の…こほん。そうか。

[2049] : (娯楽用というにはあまりにも表情に乏しいそれは、少し目を伏せて)

[2049] : ≪人間 様の考えは分からないが。わたしは「そう命じられた」。だからサーカスでは、働かない。働く権利を持っていない。≫

[2049] : ≪そういうものだ。≫

Z : てっきり最初は戦闘用かと思ったんだけど。本来の用途と別の運用をされるケースは少し特殊だ。

コリン : じゃあしょうがないのか。(解体されることにはあんなに反対していたというのに、イミテイターの意思が全く気にされていないことは気にしなかった。)(たとえそうだとしても、それは自分の要望とは関係がないからだ。)

コリン : (そういうものだ、その言葉に頷いた。便利な言葉である。)

[2049] : ≪コリンは、破棄にはまだ早いと言うが。本来的には初期不良の時点でわたしは破棄されていてもおかしくはない。 わたしは運がいい。≫

[2049] : ≪戦闘用だ。今は。その為のパーツ換装も済んでいる。≫

コリン : でも戦闘用として使われてるんじゃん。一から作るよりも、ちょっと変えるだけで済むんならそっちの方が良いんだろ?

Z : そうだね、君は幸運だ……一応聞くけど、不便じゃないかい?

[2049] : ≪その指摘は正しい。流用が効くならそれに越したことはない。≫

[2049] : (と、Zの質問に俯き)

コリン : うん。だからやっぱりまだ早い。

Z : 戦闘用から娯楽用に換装することはあってもその逆は少ないと思うんだけど。

[2049] : ≪仮にわたし自身が不便を感じていたとしても、それはバベルの運営には関係がない。≫

[2049] : ≪わたしの意見は、必要がないので。≫

Z : (大げさに肩をすくめた)それはそうだ。

[2049] : (イミテイターとしては、恐らく極めて模範的な回答だ。それをどう受け取られるかはともかくとして)

コリン : 2049は逆らないもんな。(特に引っかかった様子はなかった。すっかりイミテイターの"そういうもの"という扱いに慣れている。)

Z : (君の回答が正しいことを証明するようにお手上げだと示す。そういうものだ、としながらもずっと納得していないのだろう)

[2049] : ≪ああ、逆らわない。わたしは。≫(その文字を、自らも見下ろす。自分に言い聞かせるように目を閉じた)

コリン : うん、だよな!(あなたが彼の知る大人たちのように、自分の要望を通してくれないことがないことに顔を綻ばせた。)

Z : (何かを言おうとしたが、ため息を吐いて曖昧に笑った)

[2049] : ……。(表示された文字とは裏腹に、本人がそれに頷くことはなかったが。元々動作自体が少ない。きっと些末に映るだろう)

コリン : (自分の要望が通ったことが嬉しくて、あなたの様子には気付かない。)

Z : さて。道端で随分話し込んでしまったね。ちなみにここの屋敷の隣が僕の工房だから好きに来ると良い。まあいないときは多いけど。

Z : (↗を目線で示した)

コリン : 工房……!ってことはかっこいい武器とかがいっぱいあるってことか!?

[2049] : ≪人間 様の住居を訪ねる事は推奨されていないのだが。≫ ≪招かれるぶんには、問題ないだろう。≫

コリン : 勝手に入ってもいいか!?勝手に触ってもいいか!?(良いわけないのである。)

Z : ある!!と言いたいんだけど、準備要るからまた来てよ。あとこのクソでかい屋敷は姉……じゃなくて"お嬢様"から預かってるからまあここも好きに入っていい。僕が許可する。

Z : 執事がいるときならお茶とか出てくるよ。(後ろの御屋敷…いくらか崩壊しているが…を指さした)

コリン : やった!!準備が出来たら絶対見せてくれよな!

Z : おうとも。

[2049] : (示された方を振り返り)≪承知した。 見回りの一環だ。時々顔を出す。≫

Z : ……っていうか前より壊れてるー!(今気づいた。建物にもところどころ限界が来ているようだ)

[2049] : ≪わたしはそろそろ業務に戻ろうと思う。…… 修理、は、難しそうか……≫

コリン : 修理大変そうだな……。(手伝おうとは申し出なかった)

Z : 後でテラから話聞こう…仕事が増えるな…ッ

コリン : (けれど彼はあなたの護衛に任命されたから、言えば材料を取るのについてくるくらいのことはするだろう。)

コリン : うん、2049もまたな。おれ、ゼータと一緒に壊されなくても良くなんないか、探してみるよ。

[2049] : ≪資材や資金が必要であれば、直接的な援助は出来ないが稼ぎに行く手伝いくらいはできる。必要があれば使ってくれ。≫

Z : ああ、また。その時はこき使わせてもらうッ

コリン : (あなたの意思をちっとも気にしない癖に、彼はあなたを気に掛ける。)

[2049] : ……(俯き、顔を上げ)

コリン : (それは道具への愛着とよく似ていた。)

ドニ : (歓談の脇を巨体が横切った)

[2049] : ≪ありがとう、わたしを気にかけてくれて。≫

コリン : ……!!!(一瞬目を奪われた。)

コリン : うん、だって2049はおれが困ってる時に助けてくれるんだろ。

[2049] : (向けられた感情がなんであっても、このイミテイターはそんな言葉を少年に見せた)

コリン : だったらなるべく助けてもらわなくっちゃな。

[2049] : ≪当然だ。それがわたしのこの街での役割だから。≫

Z : (表示された文字列を目線がなぞり…薄く笑った)

コリン : いや、おれは助けが絶対必要!ってわけじゃないけど、人手増えたら助かるっていうのは分かるし。

Z : あ!テラ!

マリヤ : ……?

マリヤ : (眠そうに抱き抱えられてる子ども)

[2049] : ……。

テラ : (コツコツと鋼の蹄の音。子供を抱きかかえているイミテイターが1機)

Z : おいッ!前よりずいぶん壊れてるじゃないか!どういうことなんだい?

コリン : ん?(ゼータの声に振り向いた。)

コリン : んー……、(テラと呼ばれたあなたを、遠目から眺めて)

テラ : (TB-A06、通称テラ。この地に住まう最古参級の執事型イミテイターだ)

コリン : 分かった。さっき言ってた執事って奴だな!

テラ : (しーというポーズ。眠そうな子供を抱えている)

マリヤ : (知ってる顔がいる……知らないものもいる…)(小さい子どもは、手をとりあえず向こうの皆にゆるゆると振る)

[2049] : (もう話は終わった。そう判断したのか、少年たちから少し離れて)

テラ : (去りゆく2049には目線で会釈して)

[2049] : ……。(一瞬深くしゃがみ)

コリン : あ、じゃあな!2049。(去っていくあなたには、手を振った。)


[2049] : ≪Fake! fakE!≫

跳躍=弧を描く/宙に溶ける。

[2049]は[ステルス]になった


Z : ご名答。っと……ちょうどお帰りか。悪いね。(道を開けた。そして2049のほうを振り返り、軽く手を振って見送る)

[2049] : (──跳んだ。見上げれば、宙を歩くように、鋼線の上を渡り歩くそれが、分かるかもしれない)

テラ : 申し遅れました。自分はTB-A06。フィローティス家所有の執事イミテイターです。 テラとでもお呼びください

[2049] : (もう文字は届かない。鋼線の上、地上のあなた達に手を振った)

テラ : (宙を舞うかのような跳躍、少し目を細める)

マリヤ : (ちょっとだけ見上げた…)

 2023 by ROUTE87 / 大槻

Wix.comで作成したホームページです。
このサイトに存在する地名・団体・人物は全てフィクションであり、

実在のものとは一切関係ございません。

bottom of page